第37話 知られざる網代会談 ~幕末外交史の舞台裏~
あたみ歴史こぼれ話(本編)

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あたみ歴史こぼれ話―本編の後に
このコーナーでは、「あたみ歴史こぼれ話」で
掲載しきれなかったことを中心にご紹介します。
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日伊修好通商条約の締結
なぜ日本と通商条約を締結しに来たのか?
なぜ、イタリアは日本と通商を求めてやってきたのか? アルミニヨンの著書『イタリア使節の幕末見聞記』「第一章 交易の道を求めて」に詳しく記されているので文中の一節を紹介します。
イタリア北部地方の絹の生産高は、蚕の病疫が災いして、一八六五年には、いちじるしく減少した。それまで一カ年に二億五〇〇〇万リラの収益のあった絹糸産業は、一八五八年の条約締結後、フランスとイギリスの船舶が中国および日本から搬出する生糸に圧倒されて、まさに崩壊寸前の状態にあった。
日本から輸入した蚕卵は、予想を上回る好成績をあげ、十分に採算のとれる収益をもたらしていた。しかし、その量が少ないために、極めて高価だった。また、一部相場師らが、種を掃き取ってしまった日本産の蚕卵紙にイタリア産の蚕卵を植え付け、これを日本産と称して売るなどしていたので、これを監視しなければならなかった。そこで、有力な養蚕業者らが政府に働きかけた結果、さきに大臣ニグラ氏がパリで着手した条約交渉を再開し、それによってイタリアの船舶も日本の開港場に自由に出入りできるようにし、さらにイタリア人も、その地に土地を求め、商館を設けることを可能にしようということになった。
この結果、緊急に軍艦を一隻派遣することが必要となり、当時、南米ラ・プラダ河河口、モンテビデオ港にあった護衛艦マジェンダ号が、その任に当てられることになった。そして海軍大臣アンジョレッティ提督の命により、私が、この軍艦の指揮をとることになった。
しかし、この軍艦派遣については、右に述べた理由ほどに切迫してはいなかったが、もっと重要な理由があった。それは、西洋諸国の工業製品にとっての広大な市場としてすでに開かれていた東アジアの諸国にイタリアの存在を知らしめるということだった。スエズ地峡が開削されて運河ができたことにより、アジアの人口密集地帯と、わが国との距離は短縮され、しかも、わが国はインドへの航路の途上に位置することから、いちじるしく発展したわが国イタリアの海運業の力にふさわしく、われわれもまた東アジアとの交易に乗り出そうということになったのである。
わが国植民地経営のいちじるしい立ち遅れを、果断なる決意をもって克服すべき時が来たのである。いったいに、海外へ出かけるイタリア人は、資力も手段も持たない政治的理由からの移民、あるいは肉体労働や僥倖を求めて出かけて行く貧しい人々だけであった。単一の国家として統一されたイタリアは、かつて海運国家として世界の海に雄飛したヴェネツィアやジェノヴァにも劣る地位にとどまることはできなかった。
『イタリア使節の幕末見聞記』(新人物往来社) ヴィットリオ・F・アルミニヨン(著) 大久保昭男(訳)
多賀の識者 河口半三郎
医師・津田文明が寄留していた河口半三郎家ですが、『熱海市史』「下巻 第五篇 近代 7.教育」に河口半三郎の記述がありますので紹介します。
多賀の識者 河口半三郎
彼は天保四年(一八三三)に下多賀和田木に生まれ、嘉永三年(一八五〇)十一才のとき、志を立て漢方医を修行、二年後には江戸に出て漢学を、さらに安政元年(一八五四)から六年まで、江戸および駿東郡葛山村の名医について漢方医の外科と産科を修業したのち、明治元年に下多賀に医院を開業した。しかし文明開化の波におし流され、同七年には漢方医を休業した。そしてそのあとは、医業よりも教育行政に尽すことになった。明治五年の『学制』実施以来、副区長兼学区取締として、十二年五月からは、制度改革により戸長兼学区取締補、ひきつづき学務委員として、十八年の制度廃止まで、三七才から五〇才にわたる時期を、初期小学校の設置・整備・発展のために東奔西走した。彼はなにごとにおいても熱心であり、そのため過労から十年四月に辞表を出したことがあったが、許されず、その生涯を郷土の学事に尽した。そうしたところから、彼が残した公私の文書には、おのずから行間にあふれる苦心が読みとられる。大正四年四月一日に世を去ったが、その子河口久良司も韮山講習所を出て、郷土の教育に尽し、下多賀尋常小学校の校長を勤めた。
『熱海市史』「下巻 第五篇 近代 7.教育」
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