第22話「「噏滊館(きゅうきかん)」をご存じですか?~さまざまな役割を担った先進的施設~」

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ページ番号1009841  更新日 令和3年3月30日

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あたみ歴史こぼれ話(本編)

「あたみ歴史こぼれ話」第22話の画像
「あたみ歴史こぼれ話」第22話(令和3年(2021年)2月号掲載)


※広報あたみの原本をご覧になりたい場合は、
以下のリンク先からご覧ください。

あたみ歴史こぼれ話―本編の後に

このコーナーでは、「あたみ歴史こぼれ話」で
掲載しきれなかったことを中心にご紹介します。
本編を読み進んだ後に、ご覧ください。

※このページで掲載されている画像は、閲覧のみ可能といたします。
 画像の保存、複製及び使用は禁止といたしますのでご遠慮ください。

【歴史書で紹介される噏滊館】

「噏滊館」は当時の人々にどのように紹介されていたのでしょうか。
 明治26年(1893)に発行された熱海温泉の案内書『熱海鉱泉誌』
(改正増補版)では「噏滊館」が次のように記されています。

  第四章 噏滊館
   温泉原地たる大湯の傍(かたわら)に在り。もと今井半太夫の宅地なりしが
   今は賀茂第二御料地と成れり。故岩倉右府、噏滊の病患に効あるを察せられ
         土地を宮内省に買上げ、衛生局長 長與専齋、故宮内省三等出仕 
   肥田濱五郎の諸氏、董工建築に従事し、明治十八年二月、館を開く。
   その結構壮麗なり。
   同廿四年四月、当館を温泉宿営業者一同に下附せらる。湯の中央には噏滊に
   要する機器を備へ、大湯沸騰の度ごとにその蒸気を室内に導き、吸入せしむ。
   又、雨浴あり。尋常浴室あり。その他ギョイベル会社製気圧吸入器、体重秤量器
   (体重計)、体尺計(身長計)、ワルデンブルグ氏気槽スピロメートル
   (肺活量計)、最高最低寒暖計、地湿計、晴雨計、乾湿計、雨量計等、
   その他体格測定、医療並びに測候に必要なる諸器械、一つも備はらざるなし。
   館内に浴医局及び温泉取締所を置き、もって病患及び衛生事務を負担せしむ。
   (これらの費用は浴客より徴収せる温泉料をもって支弁するものなり)
   すべて熱海に浴する人は健康と病体とを問はず、必ず浴医局に到り、一診を
   乞うを宜とす。これ来浴前と来浴後と体重その他一般の景況(ありさま)を
   比較して、もって入浴の効能を明らかにするを得、兼ねて入浴法の訓示
   (おしえ)を受くるの便あり。病者は治療の示導を要するのみならず、
   処方箋を乞うて服薬せざるべからざればなり。(処方箋は浴医局にて
   指定する薬舗において調剤するなり)

 以上のように噏滊館の概略を紹介したあと、具体的な利用のしかたについて、
 次のような説明をしています。

    ◯噏滊館案内要略
   一 本館は噏滊並びに入浴療養の病者を診察治療し及び浴法等を指導する所とす。
   一 噏滊室及び浴室は毎日、日出時に開き、午後十時に閉つるものとす。
   一 本館に入り噏滊又は休憩せらるるは浴客の随意にして無料とす。
     但し、病者は 浴医の診察を受け、許諾を得て噏滊せらるべし。
   一 入浴券は価格を定め、温泉宿に配布して売渡し、又は本館において直に
     売渡すものとす。
   一 診察時間は四月一日より九月三十日までは午前八時より午後二時まで
     十月一日より三月卅一日までは午前九時より午後三時までとし、
     日曜日、大祭日、十二月卅一日は休暇とす。但し、至急診察を要する
     病者はこの限りにあらず。
   一 新たに診察を請はるる方は、生国、現住、氏名、年齢等を告げ、
     診察順番札を受取るべし。
   一 診察の上は鑑札を渡すべし。この鑑札は来館のつど持参せらるべし。
     但し、単に処方箋を乞はるるときもまた同じ。
   一 診察を受けられたる方並びに病症により館内浴室を許したる方は、
     噏滊並びに浴法等、浴医の指示に従はるべし。
   一 診察は無料とす。但し、診察の際使用する療用品はその原価を受くる事
     あるべし。
       金弍拾銭  浴医往診料
       金三拾銭  診断書料
       金五銭   入浴一回限り
       金三拾銭  一浴一週間限り
       金三銭   気圧吸入器施用料

  右は現今実施の要略なり。頃日(ちかごろ)、北里、中濱両博士の意見により
  浴医局の改良を行ひ、某医学士を招聘せんがため、委員を設け、その方法
  取調中なりとの事なれば、不日改良の好結果を見るに至るべし。

 また、明治30年に発行された『熱海錦囊(あたみきんのう)』
 (齋藤要八著)にも「噏滊館」の説明があり、「診察及び噏滊入浴規則」が
 記されています。

  診察及び噏滊入浴規則
   一 診察は、午前八時より午後三時までとす。但、往診は午後一時より
     三時までとす。急病患者はこの限りにあらず。
   一 初診は、取締所受付口に至り、生国、住所、職業、年齢等を告げ、
     規定の診察料を納め、診察番号札を受くべし。
     (明治廿九年九月一日より診察料毎回金拾銭とす。
   一 服薬を乞ふ者は、処方箋を請求し、薬価(もしくは手術料)を受付に
     納め、受付人の認印を受け、薬局に至り、調剤せしむべし。
   一 吸滊又は本館入浴を欲する者は、浴医の診断許可を受け、噏滊又は
     入浴券を受くべし。
   一 吸滊入浴、又は入浴の時間は、浴医の指図に従ふべし。
   一 休養又は転地の際は、診察吸滊または入浴券を返納し、療養成績表を
     請求すべし。

  右の規則中は概要を挙げたるものなれば、詳細の事は本館に到りて、
  これを問ひその規則を見て詳悉すべし。 

 これによると、無料だった診察料が明治29年9月から有料(毎回10銭)と
 なったことがわかります。

『熱海鉱泉誌』内の噏滊館の絵図の画像
噏滊館(出典:『熱海鉱泉誌』)


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このページに関するお問い合わせ

教育委員会 生涯学習課 網代公民館 歴史資料管理室
〒413-8550 熱海市中央町1-1
電話:0557-48-7100ファクス:0557-48-7100
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