第32話『金草鞋』に描かれた熱海
あたみ歴史こぼれ話(本編)

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あたみ歴史こぼれ話―本編の後に
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『金草鞋』二十二編 伊豆記行
伊豆記行の原文を掲載します。
『金草鞋』活字編
吉濱より一里行きて、伊豆權現の御山なり、そうとう山といふ、麓より五十町程登る、本社は天の忍穂耳尊、御宮づくり煌々として、境内の絶景いふばかりなし、温泉あり、瀧の湯は権現堂より、七丁許下りてあり、湯宿數多湯治する人多し、相模屋、若松屋、梅屋等いふ繁昌の湯宿あり、海上を見渡せば、はつ島、大島、其外島嶼一と目に見へて景色佳矣、是よりひがねの地藏へ、山傅ひ五十丁あり、これも珍しき名地なり、
伊豆權現より廿丁許行きて、熱海の温泉なり、これは海内無雙の名湯にて、高位貴人の御方々御入湯あり、御本陣今井渡邊至て大家にて結構なり、其外藤屋相模屋などいふ繁昌の宿屋あり湯の湧き出る所、本陣の前にありて、石垣高く積あげたり、此の處の名物とて、挽物細工または蘇鐵の葉編みて、籠の如くにしたる花活、煙草入、箸の包紙には、桑名と書きてあるが、此の處の名物なりといへり、土地は南向にて海邊なれば、波打際にほがきを高く見晴しよく、毎日の漁獵新らしき魚澤山にて、總てのこと他國の温泉に異り、至て風流の湯治場所なり、
(狂)こゝもとは鹽湯なれども人の氣の世智辛くなき土地の風流
(狂)新しき魚に飽程なればとて一層ぞよき土地の風景
旅人「此熱海へは始めて參りましたが、成程這麼よい湯治場所は何處にもないから、私はどうぞいつまでも、爰に居たいによつて、どうぞ美い娘のある處へ、婿にでも這入りたいと思つても、一軒々々聽いても歩行かれず、私が思ひつきで、男振を作つて、婿は要りませぬか、婿や婿やと呼んで歩行たら、或家から、これこれ婿は幾金だと呼び込んだから、これは娘子の嫖緻が美くば、婿は安く致しませうといつたら、そんなら三文に買ふといふ、それは餘り、甚歴私のやうな者でも、三文にはなりませぬと、振り切つて出ましたが、なんと餘りではござりませぬか」、「イャイャお前の男振、三文位なもの、私が小僧を奉公に出しましたが、十年の年季で、たった二分でござります、是から見ては、お前の三文はよい値だ、はやく其家へ婿に行きなさい、さうすると、娘一人に婿三文だから丁度よい」、「婿は三文、娘は大方四文と出かける娘であらうから、一文彼方が貴價貴價」、
熱海を出て山路峠を打越て、上多賀下多賀といふを過ぎて、網代の宿なり、此處は大船の出入する良港にて、商人多く賑はしき處なり。
(狂)鳶も輪をかける日和の長閑さに桶のたがなる峠越したり
(狂)乗物の網代の町のぼうばなに乘込で來る船舶のゆたかさ
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