令和7年2月市議会定例会市長施政方針

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ページ番号1016771  更新日 令和7年3月1日

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写真 市長施政方針読み上げ

2月20日に行われました令和7年2月市議会定例会において、市長が施政方針を述べました。

1.はじめに

 令和7年2月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信を述べさせていただくとともに、令和7年度の施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

伊豆山被災地域をはじめとする復旧・復興の加速と熱海2030ビジョンの推進

 昨年を振り返りますと、まず、元日に能登半島地震が発生しました。その後、能登半島と伊豆半島の類似性から、伊豆半島首長会議の中でも広域防災のあり方について議論がなされました。また、8月の台風10号では市内各所に被害が生じ、特に火葬場は未だ機能が回復していない状況であります。市民の皆様の負担を軽減するためにも、一日も早い回復が必要です。昨年は、改めて災害に対する備えが重要であると認識した年でした。
 伊豆山被災地域の復旧・復興に関しては、昨年10月に岸谷2号線が仮開通しました。道路・河川の工事も進み始め、復興が着実に形として見えてきた年であったと思います。
 また、昨年は、観光施策を推進する新たな体制の整備が進んだ年でした。2月定例会で宿泊税条例を可決いただき、7月に「一般財団法人熱海観光局」が設立、その後、観光戦略を担う責任者としての専務理事(CEO)が、全国公募を経て選任されました。
 令和7年度は、引き続き最優先課題である伊豆山被災地域の復旧・復興、及び台風10号による被害からの復旧・復興に係る事業を着実に実施するとともに、「宿泊税」を財源とした「熱海観光局」の始動による観光振興と、地域経済の更なる活性化を図るための新たな施策を展開してまいります。
 同時に、子育て、教育、福祉、環境など住民福祉の向上を図り、市民満足度を高めていくための施策を推進し、中長期的な視点で熱海市が持続的に発展する仕組みづくりを目指した「熱海2030ビジョン」の実現に取り組んでまいります。
 改めまして、市民、産業界、そして議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2.令和7年度の重点施策

(1) 伊豆山被災地域をはじめとする復旧・復興の加速

 一昨年9月の警戒区域の解除により、昨年から伊豆山被災地域の復旧・復興に向けた事業が本格的に開始され、昨年10月には岸谷2号線が仮開通しました。伊豆山神社線より上流部の河川工事及びその下流の取付道路についても着手しているほか、新たに、3月からはJR上流部の暗渠区間の工事に着手いたします。
 また、昨年8月には台風10号により火葬場をはじめ市内各所が被災し、市民の皆様の生活に大変なご不便をおかけしているところです。
 被災された方々の生活支援や市民生活の不便解消をしっかりと進めながら、伊豆山被災地域をはじめとする復旧・復興が早期になされるよう全力を挙げて取り組むとともに、必要な政策資源を投入してまいります。

1. 復興まちづくり計画の推進

 伊豆山被災地域の復旧・復興に関しましては、「伊豆山復興基本計画」、「伊豆山復興まちづくり計画」、及び「伊豆山復興事業計画」に基づき、道路・河川などの整備、宅地復旧の促進、(仮称)伊豆山地区コミュニティ防災センターの整備、消防団第4分団詰所の再建など、伊豆山地区の早期の復旧・復興に向け、着実に事業を推進してまいります。
 なお、地域コミュニティ活動の拠点であるとともに防災備蓄倉庫を併設し、一時避難所としての機能を有する(仮称)伊豆山地区コミュニティ防災センターの整備、及び消防団活動の拠点となる第4分団詰所の再建につきましては、令和7年度中の完成を目指してまいります。
 また、復興の進捗管理につきましては、「熱海市伊豆山復興まちづくり推進懇話会」において意見を伺うなど、PDCAサイクルに基づき行ってまいります。

2.逢初川沿い市道及び農地の再整備等

 被災地の中核となる逢初川沿い市道の整備につきましては、令和8年度の完成を目指し、静岡県が行なう逢初川改修事業と連携しながら、事業を進めてまいります。事業を進めるにあたりましては、昨年に引き続き、地区別説明会等を継続し、被災者の方々の意見を丁寧に伺いながら、整備を進めてまいります。また、被災した農地の復旧につきましても、「(仮称)熱海市被災農地復旧事業補助金」の制度を新たに設け、着実に事業を進めてまいります。

3.被災者生活再建支援の継続

 避難生活を継続されている被災者の方々が、伊豆山に帰還し生活再建に進んでいただけるよう、住居支援や引越しに係る費用の支援、住宅の新築、購入、補修に係る借入れに対する利子助成など必要な生活再建支援や見守り、相談支援を継続してまいります。
 また、地域交流拠点として「いずさんっち」を活用し、伊豆山に帰還された方、地域住民や町内会、民生委員児童委員協議会などの皆様とともに、地域づくりを進めてまいります。

4.台風10号により被災した火葬場等への対応

 昨年8月の台風10号により被災した火葬場につきましては、被災直後から伊東市、三島函南広域行政組合、真鶴町に協力を仰ぎ、火葬を受け入れていただいておりますが、市民の皆様には大変なご不便をおかけしている状況が続いております。
 市民生活において必要不可欠な火葬場の復旧に当たりましては、施設、設備等の改修工事と合わせ、周辺の安全対策についても、関係機関と連携を図りながら、一日も早い再開を目指して取り組んでまいります。
 同じく、台風10号により西熱海町地内において市有地を含めた法面から土砂等が流出し、民家に被害が発生したことから、再度の土砂等の流出を防護するため、当該崩落上部の市有地に落石防護柵を設置し、安全を確保してまいります。

(2)熱海躍進に向けた「熱海2030ビジョン」の推進

 「熱海2030ビジョン」は、人口減少社会であっても、経済の持続的発展と豊かな市民の暮らしを実現できる温泉観光地の全国モデルをここ熱海から作っていくことを基本理念としております。
 昨年2月定例会で宿泊税条例が可決され、4月からは宿泊税の徴収が始まり、「熱海観光局」が始動します。
 「熱海2030ビジョン」に掲げた「持続可能な温泉観光地・熱海」の実現を目指し、温泉観光地としての魅力と市民生活の質をさらに高めていく施策を実施してまいります。

1.地域経済の更なる活性化

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類へ移行したことに伴い、観光市場は徐々に以前の活気を取り戻しつつあります。令和6年の年間宿泊客数は、令和元年以来5年ぶりに300万人を超える見込みです。また、インバウンド旅行者数も全国的な傾向と同様に増加しており、令和6年における熱海市のインバウンド宿泊客数は15万人に達しました。
 一方で、日帰り観光客を含む観光交流客の動向を見ると、日帰り観光客の割合が増加しています。この背景には、宿泊施設において人手不足などにより稼働率の向上が難しい状況があり、結果として宿泊需要を十分に取り込めていない課題が浮き彫りとなっています。また、局地的なオーバーツーリズムが発生しており、住環境の悪化や交通渋滞といった問題が顕在化しています。
 これらの課題を解決するため、平日への旅行需要の平準化を図る施策として、ビジネス利用の促進やインバウンド需要のさらなる取り込みを軸に進めてまいります。併せて、市内事業者の雇用対策支援やオーバーツーリズムへの具体的な対応にも取り組みます。
 ビジネス利用の促進につきましては、令和5年に株式会社JTBと締結した「交流人口及び関係人口の拡大の推進に関する包括連携協定」に基づき、引き続き企業の会議や研修の誘致に向けた営業・プロモーション活動を強化します。その他、ベンチャー企業等を対象としたセミナー開催や、タクシーデジタルサイネージの活用による認知度の拡大を図るとともに、専用デスクの運用強化を通じて、受け入れ環境の整備を進めます。また、新たに宿泊施設やコワーキングスペースへの高性能Wi-Fi設備導入を支援する補助制度を創設します。
 インバウンド誘客につきましては、令和6年8月に株式会社HISと締結した「インバウンド観光推進に関する協定」や、台湾の現地企業との代理店契約に基づき、引き続き台湾市場へのプロモーション強化を図ります。また、新たにインバウンド戦略を策定し、リピーターの多いタイをはじめとする東南アジア諸国からの誘客に取り組みます。さらに、首都圏に加えた観光目的地としての熱海の認知拡大に努めるとともに、欧米からの誘客についても検討を進めてまいります。
 併せて、人手不足の解消に向け、短時間雇用を創出するための「もしあた」サイトの運用強化や、業務効率化を促進するセミナーの開催、ITベンダーとのマッチング、副業・兼業採用の支援に取り組みます。また、静岡県との並行補助を活用した宿泊施設従業員宿舎の改修事業なども推進していまいります。
 「熱海市観光基本計画」は令和7年度で目標年次を迎えます。これを踏まえ、次期観光基本計画の策定に向け、昨年7月に設立した「熱海観光局」と連携し、更なる宿泊客の増加と観光消費の拡大を目指した計画及び戦略の策定に取り組んでまいります。
 また、海の玄関口を豊かにし、熱海の回遊性を高めるため、開発途上である熱海港湾エリアの整備につきまして、現在、埋め立てが進んでいる渚第4工区の利活用の検討を進めるとともに、ターミナル周辺から和田浜地区の観光用地なども含めたエリアの整備イメージの具体化に向けた検討に着手してまいります。

2.子育て・教育・福祉の充実

 これまで国の幼児教育・保育の無償化の対象とされている3歳以上の就学前児童の保育料に加えて、保護者等の負担軽減をより一層図るため、令和7年度からは、市独自に0歳児から2歳児までの保育料の無償化を実施します。併せて、同年齢の児童を家庭で保育している世帯につきましては、「在宅育児応援金」として、対象児童一人当たり1カ月1万円を支給し、子育てに係る経済的負担の軽減を図ってまいります。
 さらに、18歳以下の児童を3人以上養育する多子世帯に対するランドセル等の購入費用及び放課後児童クラブ利用料の助成につきましては、助成対象を第2子以降にするなど支援を拡充してまいります。
 就学前児童のいる親子などが利用される親子ふれあいサロンにつきましては、利用者のニーズを踏まえ、授乳室の改修や遊具の充実など、利便性や満足度のさらなる向上に努めてまいります。
 南熱海地区の就学前教育施設のあり方を見直し、和田木保育園と多賀幼稚園を統合し、「(仮称)南あたみこども園」として整備し、子どもたちが安全で安心な心地よい環境で就学前児童教育を受けられるような施設の設計等を進めてまいります。
 国がICT教育推進の見地から導入した、児童・生徒用タブレット端末につきましては、導入から5年が経過するため、機器の更新を進めてまいります。
 さらに、令和4年度から急激な高騰を続ける給食食材料費の家計への影響を抑えるための小中学校給食食材料費負担軽減につきましては、令和7年度も引き続き実施し、子育て家庭の生活支援を切れ目なく行ってまいります。
 高齢者施策につきましては、加齢により聴力機能が低下した高齢者の皆様が安定した日常生活を送るとともに、認知症予防や社会参加につながるよう、補聴器の購入費の一部を助成してまいります。

3.仕事・くらしの変革

 市内事業所における人材不足の解消に向け、奨学金代理返還支援制度を実施してまいります。本制度は、市内事業所で働く従業者が抱える奨学金返済を、市と就業先企業が共同で支援するもので、企業の魅力向上と職への定着率の向上を目的としています。また、奨学金の代理返還を行う事業者に対し、市が支援をすることで、市内の雇用環境の充実を図ってまいります。
 令和2年3月に閉校した旧網代小学校の利活用を通じた「ふるさと創生事業」を引き続き推進してまいります。この事業では、新しい地方経済・生活環境創生交付金を活用し、旧網代小学校を網代地区のハブ機能を担う拠点として整備します。まちづくり会社を中心に、地域住民と域外からの人的資源との連携を図り、地域資源を活用した交流促進事業を展開することで、持続可能な地域活性化を目指します。令和7年度は、整備された交流スペース、テナントオフィス、コワーキングスペースを活用し、域内外から新たな人の流れを生み出すとともに、地域資源を活用した交流促進事業を積極的に進めてまいります。
 また、エリアリノベーションまちづくり事業として、ワークショップやエリアリノベーション会議の開催を通じ、地域住民や専門家が連携した地域づくりの方向性を議論・共有し、具体的な施策を形にする取組みを展開してまいります。これにより、地域の課題解決と活性化を図ります。
 2050年ゼロカーボンシティの実現に向け、令和6年度に策定した「熱海市脱炭素ロードマップ」に基づく脱炭素に向けた取組みを推進してまいります。令和7年度は、本市としては初となるEV車両の公用車の購入、及び第3庁舎、福祉事務所、エコプラント姫の沢の照明器具のLED化に取り組むとともに、公共施設太陽光発電設備導入調査を実施し、公共施設への再生可能エネルギー設備の導入を検討してまいります。
 激甚化する災害に備え、市民及び観光客の安全・安心の確保に向けて積極的に取り組んでまいります。災害対応に万全を期すため、南熱海地区を管轄する消防署南熱海出張所の水槽付き消防ポンプ自動車を更新整備するとともに、災害用ドローンを導入し、災害状況の把握、情報収集など、災害対応能力の強化を図ってまいります。

3.各部門の主要施策

 続きまして、令和7年度の主要施策について、部門毎に説明申し上げます。

(1) 経営企画部門

 まず、経営企画部門についてです。
 組織改編につきましては、近年の激甚化する豪雨や台風等による災害に迅速に対応するため、また、昨年8月に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されたこと等を踏まえ、危機管理部局を市長直轄組織へと改編いたします。さらに、本市においても外国人住民が増加していることを踏まえ、新たに多文化共生を担う部門を、また、ごみ処理広域化の検討を進める部門を市民生活部内に設置いたします。併せて、消防本部に予防課を設置し消防予防業務の体制強化を図ります。
 公共資産の維持管理、更新等につきましては、「熱海市公共施設総合管理計画」及び「熱海市公共施設個別施設アクションプラン(第2期)」に基づき、公共施設の長寿命化や老朽化対策に取り組みながら、引き続き公共施設マネジメントを推進してまいります。
 人事管理につきましては、「熱海市人材育成ビジョン」の改訂年度であることから、今後の職員育成に関しての課題を分析し、新たな人材育成の方針として改訂するとともに、採用については、試験の効果的な広報等を通じ、組織を支える多様で有能な人材の確保に引き続き努めてまいります。
 伊豆山被災地域の復旧・復興事業につきましては、静岡県及び浜松市から技術職員の協力を仰ぎ、着実に復興を進めてまいります。職員派遣にご協力をいただく静岡県及び浜松市に対しまして、改めて御礼を申し上げます。
 広報につきましては、市ホームページについて、目的の情報に容易にアクセスできるよう改修するとともに、アイコン等の視覚的デザインを改善し、より使いやすいホームページにしてまいります。
 令和7年度は「第五次熱海市総合計画」の前期基本計画の最終年度を迎えることから、次の5年間の事業の方向性を定める後期基本計画を策定いたします。前期基本計画の進捗状況を踏まえ、同時期に策定する「地方版総合戦略」とも調和を図るとともに、市民職員合同会議並びに総合計画審議会の開催など、市民の皆様からのご意見、また参画を得ながら、後期基本計画の策定を進めてまいります。
 自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)につきましては、オンライン申請等を全国に普及させるため、政府が進める地方自治体情報システムの標準化・共通化に向けた標準準拠システムへの移行が開始されることから、市民生活に影響を与えることなく、円滑かつ安全な移行に取り組んでまいります。

(2) 市民生活部門

 次に、市民生活部門についてです。
 令和7年1月末時点の本市のマイナンバーカードの保有率は、約75%と普及が進んでいる一方、マイナンバーカードを利用した各種証明書のコンビニ交付の利用状況が令和5年度実績で約18%と低調に推移しております。そのため、本年3月から開始するコンビニ交付手数料の減額措置により、窓口の混雑緩和や業務負担の軽減につなげるとともに、窓口の業務フローの見直しなどを通じて、窓口運営の総合的な効率化に取り組んでまいります。
 戸籍に関する法令改正に伴い、戸籍等の記載事項として新たに氏名の振り仮名が追加されることを受け、住民登録情報などから仮設定した振り仮名情報について、市民の皆様にお知らせして情報を整備し、戸籍証明等に正確に反映できるよう対応してまいります。
 被災した火葬場の代替運営につきましては、早期再開に向けた施設改修の期間中、近隣市町などの協力を得ながら委託による火葬業務等を継続してまいりますので、市民の皆様のご理解をお願いいたします。
 国民健康保険制度の財政基盤となる保険税につきましては、介護納付金分の賦課方式の変更や、子ども・子育て支援金の制度創設などを踏まえ、税率改正等の検討を進めてまいります。
 令和7年4月1日から課税を開始する宿泊税につきましては、特別徴収義務者である宿泊事業者の申告及び納入状況を適宜把握し、納税義務者である宿泊者に対する周知を継続しつつ、宿泊事業者に対する的確な助言・指導を行い、円滑な課税及び徴収を実施してまいります。また、宿泊事業者に対する特別徴収事務交付金の交付及び収納管理の円滑かつ適正な実施のため、事務処理システムを構築してまいります。
 伊豆山被災地域において、旧警戒区域及びその周辺における社会資本の復旧・復興の状況等を総合的に勘案し、旧警戒区域内に所在する土地家屋にかかる固定資産税及び都市計画税につきましては、令和6年度に引き続き減免措置を講じてまいります。
 利便性が高い納税方法である地方税統一QRコードを活用した電子納付、いわゆるeLTAX(エルタックス)及び口座振替につきましては、利用を促進するため、納付案内リーフレットを各納税通知書に同封するなど周知を図ってまいります。
 市税滞納につきましては、滞納事案に対する早期着手・早期完結を促進し、納期限内に納付している納税者に不公平が生じないよう、預貯金や給与の差押等、滞納整理の強化に取り組んでまいります。
 国の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の1つとして令和6年度に実施した、「定額減税しきれないと見込まれる方への給付(調整給付金)」につきましては、令和6年分所得税及び定額減税の実績額等が確定することにより、本来給付すべき給付額と差額が生じた方には、追加で「不足額給付」を適切かつ迅速に実施してまいります。
 市民協働につきましては、男女共同参画や、消費生活の推進に取り組む団体との連携を一層深め、協働による地域づくりを推進してまいります。
 地域コミュニティにつきましては、その中核となる町内会長連合会の自治活動への支援として、令和6年度に地域コミュニティ活動推進事業補助金の運用を見直し、町内会管理の防犯灯の設置、交換に対する費用への補助を行っているところです。当該補助金の運用につきましては、町内会からの声と利用実績に鑑み、令和7年度についても継続してまいります。
 本市では、令和元年に652名だった外国人人口は、令和6年には約1.85倍の1,207名に増加しております。この傾向は、本市の基幹産業であります観光業、とりわけ、ホテル・旅館などの宿泊施設への就労を主な目的として転入している状況にあります。
 このように、本市における人口減少及び労働力不足などの社会構造の著しい変化に応じ、外国人住民への生活支援や市民が多文化共生への理解を深める施策の必要性が高まっております。このことから多文化共生を担う部門を市民生活部内に新設し、今後も増加が見込まれる外国人住民との共生及び多文化に対する理解などを深め、地元住民と外国人住民が共に暮らしていくための仕組みづくりを進めてまいります。
 令和7年度の具体的な取り組みとしましては、生活習慣の違いやゴミ出しなどの生活全般にわたるルールなどの情報が伝わっておらず、一部の地域において問題となっている現状を踏まえ、やさしい日本語や英語などによる主だった生活上のルールや町内会への参加を促すためのパンフレットを作成してまいります。
 その他の外国人住民に対する施策としては、静岡県において、やさしい日本語の普及を含む外国人住民への日本語教育の実施と外国人相談窓口の開設を重点的に進めていることを受け、これまで行ってきた外国人住民向けの日本語教室を引き続き開催し、新規事業として、多文化共生窓口にテレビ通訳タブレット端末1台を設置し、外国人住民の総合窓口としての機能を強化してまいります。
 また、市民の多文化への理解や国際感覚を育む取り組みとして、若年層の早い段階で経験することが重要かつ効果的であると捉え、「中学生海外研修補助金」につきましては、ここ数年の応募と抽選状況を踏まえ、募集人数を従前の3人から4人へ増員して実施してまいります。
 環境政策につきましては、「熱海市脱炭素ロードマップ」に基づき、ゼロカーボンシティ実現に向け決定した施策を実行し、脱炭素に向けた取組みの推進に努めてまいります。
 ごみ処理施設の老朽化が進み、近い将来、新たな施設の検討をしなければならない中、安定的かつ効率的な廃棄物処理を持続可能なものとすることを目的として、ごみ処理の広域化を進めてまいります。令和7年度は広域化における新施設の建設候補地選定や基本構想の策定、並びに枠組の決定に向け、熱海市、三島市、裾野市、長泉町、函南町による新組織において検討を進めてまいります。
 指定避難所の環境改善につきましては、高齢者等が良好な状態で睡眠がとれるよう段ボールベッドや簡易ベッド、避難された方のプライバシーを確保するためのパーティション、暖房器具等の備品を整備するなど、避難所の生活において、少しでも精神的、体力的な負担を軽減できるよう、取組みを進めてまいります。
 今後も、市民の皆様の地域の核である町内会や自主防災組織を通じた活動への支援を継続するとともに、防災講演会や防災出前講座などにより、行政と地域が意思疎通を図りながら、「自助」、「共助」の取組みを進めていただけるよう支援してまいります。
 市職員には、気象防災や災害対応に関する研修等を実施し、災害対応能力の向上を図ってまいります。
 さらに、地域安全コミュニティ活動の継続と充実は、交通安全や犯罪防止に寄与するものであります。今後も、安全で安心して暮らせる地域社会の実現に努めるとともに、不幸にも被害に遭われた方々の支援にもしっかりと取り組んでまいります。

(3) 観光経済部門

 次に、観光経済部門についてです。
 観光振興につきましては、平日や春季・秋季の閑散期への誘客促進をはじめ、静岡県観光協会、美しい伊豆創造センター、市内観光関連団体と連携し、積極的なプロモーション活動を展開してまいります。また、三島市・函南町と連携して実施する「伊豆ファン倶楽部事業」では、飲食店でのポイント制度を活用して回遊性を高めるとともに、「トークン」と呼ばれるデジタル会員証を活用したコミュニティと連携し、伊豆を応援してくださるリピーターの獲得・定着を促進してまいります。
 「2025大阪・関西万博」に向けては、万博首長連合に加盟する全国の自治体と連携し、共同でプロモーション活動を行います。焼津市と共に「温泉」をテーマに出展を行うほか、大阪観光局が主催する日本観光のショーケース事業において、大分県別府市や愛媛県松山市などの温泉地と協力し、温泉ツーリズムを世界へ発信する取組みを進めます。また、ブルネイ・ダルサラーム国との交流においては、ブルネイが展開するパビリオンで熱海の観光情報を発信し、文化・教育・経済交流に繋がる活動を推進してまいります。
 熱海市の誘客の柱となるメディア・プロモーション事業につきましては、「地域おこし協力隊」によるSNS等を活用した熱海の魅力発信を強化します。さらに、新たにビジネス利用や交流促進を担う隊員を採用し、幅広いプロモーション活動を行ってまいります。
 産業振興につきましては、熱海市チャレンジ応援センター「A-supo(エーサポ)」による個別相談を充実させ、アフターコロナに対応した事業再構築や企業間連携の強化に取り組みます。さらに、空き家・空き店舗を活用した地域課題解決に向け、リノベーションまちづくり構想を具現化する取組みを推進するとともに、商店街の施設改修支援、住宅店舗リフォームの補助、テレワークの拡大による移住・就業支援の補助など、地域活性化を図るための施策を進めてまいります。
 コロナ禍で打撃を受けた事業者の事業活動の支援を行うため、経済対策貸付利子補給事業を継続するとともに、物価やエネルギー価格の高騰に対応するため、全ての事業者を対象とした助成策を適宜講じてまいります。
 農林水産振興につきましては、農業の担い手支援を通じて農業基盤の整備を進めるとともに、適切な農道・林道の管理を行います。また、ナラ枯れ被害対策や有害鳥獣による被害防止のための資材購入支援を継続し、森林整備については令和6年度から始めた間伐等を引き続き実施してまいります。
 また、初島漁港の機能強化を図るため、引き続き工事を実施するとともに、養殖漁業支援など漁業基盤の整備にも力を入れてまいります。

(4) 建設部門

 次に、建設部門についてです。
 人口減少下においても持続可能な都市経営を推進するための指針である「立地適正化計画」について更新作業を行ってまいります。また、同計画の目指す姿である「コンパクト+ネットワーク」について、その一翼を担う公共交通を取り巻く環境は、運転士不足等により厳しいものとなっていることから、こうした課題を多くの関係者とともに解決すべく昨年6月に公表した「熱海市地域公共交通計画」に基づき、より良い公共交通の実現に向けて取り組んでまいります。
 また、静岡、神奈川両県において検討が進んでいる伊豆湘南道路につきましては、交通渋滞の解消、観光産業の活性化、災害に強い広域道路ネットワークの構築のため、早期実現を目指し、伊豆湘南道路建設促進期成同盟会などを通じ、強力に国に働きかけを行ってまいります。
 住宅施策につきましては、熱海市内でも増加している空家について、昨年公表した「熱海市住生活基本計画」、及び令和6年度に実施した「空家の実態調査」の結果を踏まえ、令和7年度は「熱海市空家等対策計画」を改訂し、空家対策を推進していきます。
 昨年より本格的に検討を始めた熱海駅前の渋滞対策につきましては、令和6年度より実施している調査結果などを踏まえ、具体的な対策案の検討・実施を進めてまいります。
 道路等の適切な維持管理を持続可能なものとするため、土木技術職員の減少を踏まえた業務改善を進めます。具体的には、年間300件以上ある小規模修繕工事を、年間を通じた工事契約により対応することで、職員の負担軽減を図るほか、これまで職員が行っていた設計、積算、工事監理の一部を外部委託してまいります。
 また、昨年の台風等で被害を受けた河川等の復旧及び改良工事を進め、再度災害防止に努めてまいります。
市営駐車場の利用料金につきましては、現状の夏季の利用状況等の調査を実施し、夏期料金の設定等の見直しを進めてまいります。

(5) 健康福祉部門

 次に、健康福祉部門についてです。
 人口減少や高齢化の進行、高齢者の単身世帯の増加などにより、暮らしの課題が複雑化・複合化している中、住み慣れた地域で共に支え合い誰もが安心して暮らせるよう、「重層的支援体制整備事業」により包括的な支援体制の構築や共助の地域づくりなど、地域共生社会の実現を目指してまいります。
 高齢者福祉・介護につきましては、「第10次熱海市高齢者福祉計画」及び「第9期熱海市介護保険事業計画」に基づき、地域包括ケアシステムを推進するとともに、介護保険制度の円滑な運営を図るため、介護人材の確保やサービス提供体制の基盤整備を進めてまいります。
 子育て支援につきましては、子どもたちの健やかな育ちを実現するため、新たに母子保健計画と一体的に策定した「第三期熱海市子ども・子育て支援事業計画」に基づき、子ども・子育て支援施策を総合的に推進してまいります。
 また、全ての妊産婦、子育て世帯、子どもに対する一体的な相談支援を実施するため、「こども家庭センター」を設置いたします。
 障がい福祉につきましては、障がいをお持ちの方が地域で安心して暮らしていけるよう、身体・知的・精神の3障害の総合的及び専門的な相談の実施や地域の相談支援体制の強化を図るため、相談支援の中核機関となる「基幹相談支援センター」の令和8年度開設に向けた協議を進めてまいります。
 新型コロナウイルス感染症対策等により先延ばしとなっておりました旧市立養護老人ホーム梅園荘の解体につきましては、令和7年度に工事を実施し、景観上の配慮及び防犯・安全性の確保を図ってまいります。
 生活困窮者支援につきましては、生活困窮世帯及び生活保護世帯の実情に応じた支援を行うため、関係機関と連携し、就労や住居確保等、自立に向けた支援体制の強化に取り組んでまいります。
 健康づくりにつきましては、「熱海市健康づくり計画」に基づき、疾病の早期発見・早期対応をはじめとした生活習慣病予防及び介護予防対策を継続推進してまいります。
 また、感染症予防策として「帯状疱疹ワクチン」については、令和6年度より実施した50歳以上の任意接種にかかる費用助成に加え、65歳以上の節目年齢の方などを対象とした定期接種を新たに実施するとともに、重症化リスクの高い「新型コロナワクチン接種」などについても、市民の皆様への周知を図り、より円滑に接種できる環境を提供してまいります。

(6) 公営企業部門

 次に、公営企業部門についてです。
 公営企業四事業につきましては、ライフラインを担う事業として、効率的かつ安定的な事業運営に努め、安全・安心で豊かな市民生活の向上に寄与してまいります。
 水道事業につきましては、引き続き、老朽化した基幹施設の大規模更新事業を進めてまいります。築造から60年を迎えた来宮浄水場の再整備事業につきましては、令和7年度は膜ろ過施設整備工事等を実施し、令和10年度の完成を目指してまいります。
 また、本年度は段階的な水道料金改定の2年目となりますが、財源の確保とともに、老朽施設の更新を計画的に進め、安全な水を安定して供給できるよう努めてまいります。
 水道広域化及び県営駿豆水道につきましては、将来を見据えた事業の在り方や受水費について、静岡県の作成した「広域化推進プラン」に基づき、関係者との協議を行うとともに、駿豆水道の今後の受水量などについて三島市、函南町と協議を進めてまいります。
 下水道事業につきましては、「ストックマネジメント計画」に基づき、老朽化した管路施設や浄水管理センター設備の更新工事を進めるとともに、近年発生頻度が増加している自然災害に対し、安全に汚水処理を継続するため、管路施設及び浄水管理センターの耐震化に取り組んでまいります。また、下水道使用料の改定により財源を確保し、老朽施設の更新を着実に進め、安定した汚水処理を継続できるよう努めてまいります。
 温泉事業につきましては、当市の基幹産業を支える重要資源の一つでもある温泉を給湯しているため、その源泉や送配湯管等の老朽施設の更新を図り、安定して給湯できるよう努めてまいります。
 初島漁業集落排水事業につきましては、供用開始から15年以上が経過し、施設の老朽化が進んでおります。また、離島の海岸沿いに設置されている特性から劣化も進んでおり、漁港及び周辺水域の良好な水質を維持するため、設備の機能保全を計画的に行ってまいります。

(7) 消防部門

 次に、消防部門についてです。
 消防力の要は人材です。消防職員の更なる知識、技術の向上のため、外部派遣研修を含めた研修を積極的に行い、人材育成に努めてまいります。
 救急体制につきましては、人口に対して高い水準で推移する救急需要に対し、救急救命士の育成に努め、メディカルコントロール協議会との連携のもと、救急業務の高度化推進へ引き続き取り組んでまいります。
 また、救急業務のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進し、救急搬送の迅速化を図ることを目的に、マイナンバーカードを活用した「マイナ救急」を導入してまいります。
 火災予防につきましては、防火対象物への防火管理指導と予防査察を積極的に実施するとともに、違反是正の徹底を通じ、火災の予防に努めてまいります。
 また、高齢者の安全確保を重点目標として、住宅火災を未然に防ぐ火災予防広報活動とともに、住宅用火災警報器の設置や取り替えの推進など防火対策の強化を図ってまいります。
 消防力の充実強化につきましては、静岡県東部地区の消防本部と大規模災害対応合同訓練を行うなど、連携強化に努めてまいります。
 今後も、地域防災の要である消防団との連携強化を図り、常備・非常備消防が一体となり、地域の安全・安心の確保に努めてまいります。

(8) 教育文化部門

 次に、教育文化部門についてです。
 学校教育につきましては、「熱海2030ビジョン」に掲げる、教育の充実にかかる施策に取り組むとともに、これまでも課題となっている小中学校における学力の向上を目指してまいります。また、年々増加傾向にある不登校の児童・生徒には、個別に丁寧に対応しながら、引き続きその解消に努めてまいります。
 老朽化の進む学校施設につきましては、消防設備の改修を重点的に進めるなど、必要な施設修繕等を行いながら児童・生徒が安心して学べる環境の整備を行ってまいります。
 本市の少子化の進行から望ましい教育環境を構築していく必要性が高まっています。そのため「学校等施設の適正規模・適正配置計画」の見直しについて教育委員会と協議し、望ましい教育環境の再構築を目指してまいります。
 姫の沢自然の家は、平成30年度末の施設廃止以降手付かずのままとなっておりましたが、解体工事を実施し、姫の沢公園内の景観上の問題や危険性を解決してまいります。
 埋蔵文化財関係では、「伊豆権現関連遺跡群等調査事業」として、国史跡化を目指し、伊豆山地区の貴重な歴史文化資源である埋蔵文化財を調査してまいります。
 起雲閣につきましては、市指定文化財の和館から洋館へつながる通路の石積み部分基礎の改修工事などを行い、その魅力、来館満足度を向上させる取組みを進めてまいります。また、その他の文化施設についても、指定管理者と連携しながら計画的なメンテナンスを実施してまいります。
 図書館につきましては、篤志家からのご寄附により購入いたしました新しいブックバスが、本年4月10日の市制記念日から運行いたします。新しい車両の運行に併せて、ブックバスの運行スケジュールを見直し、今まで「本」を届けることが出来なかった上多賀自然郷地域や伊豆山七尾原地域にもステーションを新設することで、図書館所在地から離れた地域にお住いの皆様にも図書館サービスを提供できるように努めてまいります。
 図書館建物につきましては、本年3月に空調設備等の建物設備改修工事が終了いたします。より快適な室内環境で読書を楽しめるようになることに加え、書籍排架も変更し、一層利用しやすい図書館としてまいります。さらに新年度からは、利用者満足度の向上を目指し、月曜日を除く祝日も開館いたします。
 以上の施策をはじめ、「熱海市教育振興基本計画(兼教育大綱)」に位置付けた目標に向け、諸施策を着実に進めてまいります。

4.むすびに

 令和7年は、日本と熱海市にとって節目の年となります。昭和100年、熱海駅開業100周年の年であります。この節目の年を飛躍の機会と捉え、私は伊豆山被災地域をはじめとする復旧・復興の加速と「熱海2030ビジョン」の推進に向け、全身全霊で取り組んでまいる所存です。
 議員各位、並びに市民の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

令和7年2月20日

熱海市長  齊 藤  栄

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