平成25年3月市議会定例会市長施政方針
2月22日に行われました平成25年3月市議会定例会において、市長が施政方針を述べました。
1.はじめに
平成25年3月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信を述べさせていただくとともに、25年度の施策の概要を申し上げ、議員各位、並びに市民の皆様のご理解とご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。
2.明治、昭和に続く「第三の成長期」を作る
平成19年度から5年間にわたる厳しい行財政改革を経て、昨年から市政の目標として「新生(リニューアル)熱海」の創造を掲げました。歴史を振り返ると、近代熱海には、これまでに二度の成長期があったと認識しています。
第一は、明治時代中期から大正時代にかけてです。この期間は、梅園や噏滊館、そして日本初の市外電話などに象徴される、時代の最先端をいく施設や設備が熱海に作られた頃です。また、明治維新後の重要な会談も開かれており、熱海は政財界の要人の保養地として発展を遂げました。
第二は、昭和の高度経済成長期にかけてです。この時の熱海の成長は、昭和9年の丹那トンネル開通が契機となっています。熱海大火からの復興の象徴として昭和28年に現在の市庁舎が完成し、この頃に駅デパートも建設されました。全国津々浦々から観光客が押し寄せ、観光地として一世を風靡しました。そして、昭和40年代には人口もピークを迎えました。一方で大衆化に伴い、静寂や落ち着きといった保養地としての魅力が薄れてきた面も否めません。
こうした歴史を振り返ると、熱海は60年から70年周期で著しい成長期を迎えていると考えられます。そして今、先人の残してきたものを大切にしながら、現代に生きる我々の新たな挑戦によって、「第三の成長期」を実現していく時期を迎えました。「再生」ではなく「新生」。「新生」とは、こうした第三の成長期に向けて「熱海が新しく生まれ変わる」という意味を込めたものです。
3.三大建設プロジェクトほかの完成
(1)市庁舎
分庁化による整備を進めている市庁舎については、昨年夏には耐震化した文化会館を新たな第3庁舎として、市議会議場等を移転しました。現在は、観光会館、中央町駐車場を取り壊しておりますが、平成25年度は、この跡地に新たな第1庁舎と消防庁舎を合築で建設します。安全性を確保し、簡素でありながら市民の皆様に利用しやすく、また、親しまれる庁舎として、26年度早々の開庁をめざしています。分庁化、システム建築の採用等によって、庁舎の本体工事、付帯工事の合計額は、19年度時点の案と比較して約半分の14億6,000万円に抑えることができ、市内における学校施設の耐震化率100%を早期に達成することができました。設備費や金利、第三庁舎の耐震化費用なども加えた総事業費は約26億2,000万円となる見通しです。
(2)熱海駅前広場
熱海駅前広場の整備事業については、既に新たなバス停の供用を開始しました。25年度は、引き続き一般車両の一時駐車場、旅館・ホテルなどの送迎バスの乗降場、足湯などを整備します。伊豆の玄関にふさわしい風格、賑わい、開放感の創出と、市民の利便性の向上を図り、26年4月の全面供用開始を目指します。同時に、市内中心部への街歩きの出入り口となる駅前商店街の賑わい創出のため、路面の改修を進めています。なお、JR東日本でも、駅舎と駅ビルを27年春頃までに建て替える計画です。
(3)新生熱海中学校
地域の皆様、そして卒業生をはじめとする関係者の皆様のご理解とご協力により統合が決定した(現)熱海中学校と小嵐中学校については、統合後の新校舎の建設や、市ゆかりの方々の手による新しい校歌の制作が進んでいます。将来にわたる良好な教育環境を創出するとともに、両校の良き伝統を尊重した新たな歴史を刻むべく、26年4月の統合・開校を予定しています。
(4)中央保育園
昭和39年に竣工、開園した中央保育園は、これまでにも大規模な増築が行われてきましたが、耐震性の課題や多様化する保育ニーズに対応するために、現在地において民設民営により生まれ変わります。新たな保育園は、実績の豊富な社会福祉法人により整備、運営されますが、十分な保育環境を確保したうえで、延長保育や休日保育の実施、また、0歳児保育についても現在の生後10カ月からの受け入れを生後57日からとするなど、保育サービスの向上を図ります。近接する大湯間欠泉や湯前神社の歴史的・文化的意義や観光資源としての役割、また、地域の皆様の意見もふまえつつ、26年度の開園を目指しています。
(5)ジャカランダ遊歩道
花木については、篤志家の多大なご支援を受けて、梅園や糸川遊歩道のリニューアルを実施してまいりました。梅園では、梅まつり期間中、約20万人のお客様が訪れ、市民ボランティアの皆様による案内を受けて楽しんでおられます。これらに続き、お宮緑地のジャカランダ遊歩道の整備にも既に着手しており、26年3月の完成後は、都市部でのジャカランダ集積日本一となる見込みです。25年度は、ジャカランダの群生で日本一の宮崎県日南市も訪問して先進地との交流を深めるとともに、市民協働によるジャカランダの活用方法について学んできます。
4.営業する市役所
(1)シティプロモーションと民間投資の促進
シティプロモーションについては、平成24年度は、専門家の指導を受けて専門知識を学んだ市の職員が、内外の報道機関への広報やテレビ取材などの誘致を積極的に行ったことで、多くの報道や番組放映に繋がりました。遊休市有地への投資促進については、本日、東駐車場ガソリンスタンド跡地に、全国的にも珍しい屋上に海を臨む展望デッキを持つコンビニエンスストアが開店するなど、一歩ずつ前進をさせています。
これらを進めるに当たっては、熱海商工会議所等との連携や、市内在住の著名人、昨年2月にパートナーシップ協定を締結した民間企業、そして地域の金融機関から幅広い情報ネットワーク及び専門知識等をお借りできたことも、大変大きな推進力となりました。
25年度においても、「営業する市役所」として、関係者と連携しながら、新たに作成した「熱海市シティプロモーション基本指針」を踏まえて、本市の魅力や価値の向上に繋がる積極的な広報活動や投資促進を推進してまいります。
(2)人口増加と別荘等所有者
本市の人口構造の課題である人口減少や高齢化の進展は、若年層の転出と高齢層の転入が大きな要因の一つです。このため、24年度は、本市に移り住んだ子育て世代など市民の皆様の暮らしぶりや、熱海を選んだ理由といった情報を発信するウェブサイト「熱海時間」を開設しました。その後も、市内の不動産業者の皆様とともに東京での移住相談会に参加しており、25年度においても、官民連携して、引き続き居住地としての魅力の発信に取り組んでまいります。
また、市が開発し、平成15年に分譲を開始した月見ヶ丘分譲地については、本年に入りおよそ10年ぶりとなる大幅な価格改定をいたしました。25年度は、子育て世代の居住や二世代居住などへ繋げ転出を抑制するため、市民の皆様へのご案内を強化していきます。
本市には別荘等が約1万件あり、別荘等所有税だけで約5億円、さらに固定資産税の歳入もあり、その影響は小さなものではありません。24年度に行ったアンケート調査では、飲食店など街の情報が十分に伝わらないことが満足度を下げるおそれがある、という課題を確認しました。市内経済の活性化のためにも別荘等所有者の来訪頻度や飲食などの市内消費が増えるような情報発信等に取り組むとともに、マンションと地域コミュニティとの交流促進についても留意してまいります。
5.平成25年度の重点施策
本市の平成25年度当初予算は、昨年からスタートさせた「新生(リニューアル)熱海」をさらに前進させる年として、一般会計ベースで前年度比20億6,900万円増の196億1,200万円と、9年ぶりに190億円を超える大型の予算となっています。
ただし、その内訳を9年前と比べると、行財政改革の進展により人件費は約15億円、公債費は約10億円少ない一方で、普通建設事業費が約18億円、扶助費が約9億円多く、この間の財政構造の変化が見て取れます。普通建設事業費の大幅な増加は、市庁舎や中学校等の大型建設プロジェクトの事業費のピークが25年度に重なることが大きな要因です。
また、これらの大型建設プロジェクト以外にも、救急体制の充実や環境整備事業、具体的には、高機能消防指令センター設備の導入、高規格救急自動車の配備、環境センター焼却炉の大規模修繕や最終処分場延命のためのリサイクル施設整備等、新規事業の実施、既存事業の拡充を行います。限られた予算の中で、市民生活に直結する事業について大幅な削減をすることなく、積極的に予算配分を行った結果、前年度と比べ大きな増額となったものです。
25年度は、こうした状況を踏まえて、「元気な経済」、「豊かな暮らし」、「行政改革」の各分野について、それぞれ重点をつけて施策を実施してまいります。
(1)元気な経済
1 観光政策の方針
24年度は、観光戦略会議において、優先的に取り組むべき観光政策の課題について方向性を示し、議論していただきました。
民間事業者が実施した観光客の満足度調査によれば、宿泊施設の満足度と比較して、宿泊前後での街で過ごす時間の満足度が課題となっていることがうかがえます。来訪者の満足度やリピート率を高め、第三の成長期の実現を目指すには、短期的な誘客対策とともに、中期的に街の魅力や街で過ごす時間の豊かさを高めていくことが必要です。建設プロジェクトや民間投資、リノベーション等により街の新生(リニューアル)を進めるとともに、住民等が主体となって熱海の多様な地域資源や特徴を活かす観光まちづくりを進めます。
2 観光まちづくり
民間においては、各地区において観光振興を担ってきた観光協会が26年度中の一体化に向けて取り組んでいます。市としてもこれを支援するとともに、市営駐車場等を管理する熱海市振興公社との一体化を検討し、力強い観光まちづくりの組織基盤、プラットフォームを作ることを目指して、検討の具体化に応じて必要な対応を講じてまいります。同時に、関係市町・団体とともに、日本の顔となるブランド地域をめざして、新観光圏事業にも取り組んでまいります。
また、市民団体等が行う観光まちづくり事業への補助をさらに拡充するとともに、市外団体との連携やテーマ設定等に応じた重点化を図るよう、制度を一部見直します。
3 誘客対策、経済対策
基幹産業である宿泊産業への誘客促進については、より効果的となるよう運用を改善します。具体的には、熱海市ホテル旅館協同組合連合会など関連団体と連携し、季節毎にテーマを設定するなど、統一感のある活動とします。また、広告宣伝費についても、複数年契約とすることで年度当初からの切れ目のない誘客活動を可能とするとともに、マーケティングや事後評価まで含めて総合的に企画、執行できる事業者を提案公募(プロポーザル)方式で選定することとします。
宿泊への効果や関連産業への波及効果の確実性が高い経済対策として、春季の花火大会開催を補助するとともに、効果の低下した誘客事業は見直して、近年魅力が増した梅園の紅葉を軸にした誘客事業の充実を図ります。同時に、国道から街中への誘客により、幅広い産業の振興を図るための試みとして、海岸沿いの市営駐車場を一部無償化する実証実験プロジェクトに着手します。
26年4月には消費税率の引き上げが予定されており、レジャー消費の減少によって旅館・ホテル業界をはじめとする市内経済への影響も心配されることから、その動向に注意して、対応の必要性を検討してまいります。
4 温泉資源の利活用
温泉は、歴史史料からも垣間見えるとおり、数百年に渡って熱海の発展の礎となった最も重要な資源であり、これを後世に守り伝えると同時に、その有効な利活用について積極的に取り組む必要があります。
25年度は、「熱海の温泉資源の利活用を考える会」からの提言も踏まえて、産業界や市民と協力して、立ち寄り温泉の一覧チラシの作成、温泉と健康に関する情報の発信、温泉による発電のPRなどに取り組むとともに、本市の温泉の歴史や温泉に起因する文化などの保存、継承にも取り組んでまいります。昭和55年以来、実質的な見直しをしていない日帰りの入湯に係る入湯税につきましては、公平性や温泉の利用実態、利用促進等の観点を総合的に考慮して、そのあり方について、慎重に検討してまいります。
(2)豊かな暮らし
1 健康づくり
豊かな温泉や温暖な気候は、本市の健康的なイメージを高めています。しかし、健康に関する様々な指標を分析してみると、がんや肝疾患による死亡率の高さ、習慣的喫煙率の高さなど、いくつかの問題点が見えてまいります。このような健康に関する現状をしっかりと認識し、全ての市民が健康で生き生きと暮らしていくため、「熱海市健康づくり計画」に基づき、市民の皆様の健康増進を図ってまいります。
まず、本市の健康指標の改善に向け、死因第一位となる「がん」による死亡率の減少を目指し、各種がん検診の実施期間の拡大や時期の見直しなどにより、受診率の向上に取り組みます。特に、女性特有のがんへの対応として、子宮がんの検診方式の拡大、乳がん検診への検診車の導入など、より受診しやすい体制を構築してまいります。また、子どものう歯予防を推進するため、小学生を対象としたフッ素洗口事業を実施してまいります。
2 高齢者の健康づくりと介護予防
本市は24年末には高齢化率が40%を超え、市民の5人に2人が65歳以上の高齢社会となっています。高齢者等が地域の中で安心して生活できる効果的な諸施策を実施するにあたり、当該高齢者等の居住実態および意向調査を行い、健康、福祉、介護の各部門が連携して対応してまいります。特に、高齢者等出張相談ネットワーク事業として無医地区、交通不便地区に居住する高齢者等に対して「健康と福祉出張相談会」を開催し、介護や病気についての相談のみならず、日常生活について実情や意向を把握いたします。また、高齢の方々がいつまでも生き生きと生活するためのサポートの一つとして、「健幸チャレンジ」の実施など介護予防事業の拡充を図ります。
3 国民健康保険の税率改正
こうした市民の健康づくりや介護予防の対策は、医療費の適正化という観点からも重要です。国民健康保険税の収納率については、厳しい財政事情の中での歳入の確保、公平性の確保の観点からも、更なる向上を目指します。こうした中でも、国民健康保険事業の運営は依然として大変厳しい状況であり、25年度についても、事業の健全な運営のため、平均8%の税率改正をお願いいたします。なお、低所得者への配慮については、24年度に軽減措置を拡大しており、資産割の税率についても据え置きを図っています。
(3)行政改革
行政改革については、政策の成果や効果、市民の満足度や納得感を重視した「質の行政改革」を進めていきます。今般策定した「熱海市行政経営指針」では、限られた職員、予算等の経営資源を最大限に活用し、また市民や産業との協働を図りながら、取り組んでいく方向性を示しています。
まず、25年度には、大規模な市役所組織の再編成を行います。この中では、市民生活に近い事業部門などに人員を配置するためにも内部管理部門を統合したことや、市民協働や健康づくり、子育て支援などの政策課題に合わせた組織としたことが特徴です。さらに、26年度からの新庁舎においては、戸籍、保険、税務などの行政サービスを一つのフロアに集めて提供するなど、市民の皆様にとって便利で使いやすい市役所の実現を目指します。
職員数については、行財政改革プランで目標とした500名に対して、25年度4月時点では502名を見込んでおり、18年度と比較して132人、20.8%の減少となっています。今後は、本市特有の行政事情等を考慮しつつ、行政サービスを提供する上で必要な職員数を検証しながら、適正化を図ってまいります。
職員給与については、25年度当初予算では29億8,000万余円を計上し、18年度と比較して11億8,000万余円、28.4%の減少となっています。今後は、給与構造の見直し等の政策課題に取り組むとともに、人事院勧告を踏まえて、退職手当の支給水準を25年4月から段階的に引き下げることとして、27年度までの3カ年で1億6,800万円程度の抑制を図ります。
全国の地方公務員の給与について、国は、減災・防災事業や地域経済活性化といった課題に対応するため、国家公務員の臨時特例的な給与減額措置に準じて措置を講じるよう要請し、地方交付税も減額しています。本市としては、これまでの人件費削減実績がどのように評価されるか、また他市町の対応状況等に留意しながら、総合的に判断して対応を決めてまいります。
(4)各地区の新生につながる事業
25年度当初予算には、金額は必ずしも大きくありませんが、各地区の新生に繋がることが期待される事業にも予算配分をしています。
伊豆山地区については、老朽化や利用者の減少等のため、現在の出張所は26年3月末をもって廃止をさせていただきたいとの方針を昨年11月の住民説明会でお示ししていますが、同時に、伊豆山地区の振興策について検討することとしました。検討は年度内から着手し、25年度には地域の皆様との連携・協力により、観光、防災も含めた多面的かつ慎重な議論を重ね、効果的な施策が実施できるよう具体的に検討してまいります。
さくらの名所散策路については、観光資源として、また熱海高等学校への通学路としての役割も期待されています。昨年度の地質調査に基づき実施設計を作成、JRと具体的な協議を開始し、工事着手に備えます。また、住民や関係団体など地元の皆様の地域づくり活動の中から発した千歳川緑道構想については、地域の声を尊重しつつ、隣接する湯河原町との連携など、実現に向けた取り組みに注視するとともに、泉公園の拡充や県道十国峠伊豆山線の拡幅については、相乗的な効果を生み出せるよう、総合的に取り組んでまいります。
重要文化財である旧日向別邸は、世界的に著名な建築家ブルーノ・タウトが我が国に残した唯一の建物であることから、世界に誇れる文化遺産として保存、復元及び活用について、計画的に取り組んでまいります。また、下多賀中張窪をはじめとする石丁場遺跡は、江戸城の築城に必要な石を切り出した貴重な文化財であることから、関係機関と連携し、保存に向けた取り組みを進めてまいります。
網代魚市場が荷さばき場へ転換したことに伴う施設改修整備に財政支援を行うとともに、改修整備により生じる空地部分の公共的な利活用により、網代地区の活性化を図ってまいります。あわせて、初島の宮の前防波護岸の埋め立て事業が26年度の完成を目指して進んでいることから、埋め立て後の漁港交流広場の整備について、地元関係者の皆様と協議を進めながら、初島地区の漁業活動の効率化と観光業の活性化を図ってまいります。
6.各部門の主要施策
続きまして、平成25年度の主要施策について、部門毎に説明申し上げます。
(1)経営企画部門
経営企画部は、市の経営資源を統括し、各部署の政策形成が円滑に進むような組織や業務の仕組みづくりを担います。25年度には、行政評価のための基準づくりを進め、成果・効果を的確に判断でき、次年度の予算編成に連動できる仕組みの具体化を目指します。また、例えば公民連携など、市政全般にわたる重要な調査テーマを選定して、各部の政策検討を主導していきます。
最大の経営資源である職員の資質向上や行動改革については、「熱海市行政経営指針」に定める理念を踏まえて、職員を適正に確保・育成・評価していく方向性を体系化した「人材育成ビジョン」の策定を進め、政策課題を解決する意欲と能力の高い職員の育成に取り組みます。
自治体の重要な政策手段である条例については、例えば防災、景観、産業政策等の観点から対応が必要な空き家、空きビルの問題など、具体的な検討テーマを設定して、法務文書室が各部と連携して政策課題に対応した条例を検討する体制を構築します。
情報システムについては、例えば、サーバーに情報処理を集中させることで情報漏えいリスクの低減、端末の故障の抑制、管理コストの削減等が見込まれるシンクライアント方式など、事務の効率化のための調査を継続します。入札システムについては電子入札システムを導入し、業者負担の軽減と事務の簡素効率化に努めてまいります。
(2)市民生活部門
次に、市民生活部門についてです。
市税等の賦課徴収については、25年度当初から市税をはじめ水道や下水道料金等のコンビニ収納を開始します。これは、主要な固定資産税と都市計画税の税収の約6割が市外居住者が所有する資産にかかるものであり、県外に納付可能な金融機関が少ないなどの事情を踏まえ、納付に関する環境整備の一環として行うものです。また、県下一斉に個人住民税の収納率の向上を目指す取り組みを進めており、25年度は静岡県からの短期職員派遣を受け入れ、本市の収納業務の改善に取り組みます。
環境に係る施策としては、エコプラント姫の沢の焼却炉2基のうち、老朽化により運転を休止している1基の大規模修繕を実施し、2基での交代運転により延命化を図ります。最終処分場については、延命化と、更なる循環型社会形成を推進するための事業として、現在埋め立て処分をしているセトモノやガラス屑等をリサイクル処分いたします。この事業を実施することにより、22年程度の延命化が図れます。同時に、本年4月から「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」(小型家電リサイクル法)が施行されることに伴い、本市においても、混入されている貴重な金属類などの回収、リサイクルを実施するため、小型家電製品等の分別を行います。あわせて、し尿処理場の整備について、湯河原町、真鶴町との共同事業化を念頭に検討を進めてまいります。
防災・危機管理については、東日本大震災以降、津波対策の見直しなど、緊急的な対策を進めておりますが、南海トラフの巨大地震の想定推計値も示される中、スピード感を持った対応が求められています。本年6月には、静岡県が「第四次被害想定」を発表し、被害の軽減を図るためのアクションプランも示されることから、「熱海市地域防災計画」も含め、本格的な防災対策の見直しに取り組みます。また、これまでの東海地震や神奈川県西部の地震への対策を基礎に、防災対策の根幹となる自助・共助・公助の連携を強化するとともに、高齢化率の高い本市の実情を踏まえ、災害時要援護者の対策を強化するため、自主防災会への支援や関係機関との連携に努めてまいります。また、建物の耐震化や家具の転倒防止を推進するなど、被害軽減に効果的な対策を充実・強化してまいります。
男女共同参画については、男女共同参画社会の実現にむけて策定した「男女が共に輝くあたみ21プラン」を、社会情勢にあわせて見直し、新たな「熱海市男女共同参画計画」を策定し、着実な推進を図ります。
これら市民生活に直結する事業については、市民と行政との協働が求められてきています。そこで、25年度には市役所組織の再編を実施し、協働による効果が期待され、市民の皆様の関心も高い防災と環境に関する課題を手始めとして、様々なまちづくり活動を担っていこうと取り組まれている市民の皆様を支援していく、協働のまちづくりを目指します。
(3)健康・福祉部門
次に、健康・福祉部門についてです。
高齢者福祉については、高齢化率が40%を超える本市の実情をふまえ、健康で生き甲斐に満ちた生活を続けていただけるための事業を実施してまいります。敬老大会の開催については、実行委員会を組織し、昨年実施の敬老大会方式に加え、「健康、生きがい」を意識した大会を計画し、広く参加者を募ります。また、高齢者の自動車運転による交通事故の発生を減少させるため、運転免許返納に際し免許証に代わる身分証明書となる経歴証明書の交付事業に対して補助を行い、運転免許証自主返納制度の普及促進を図ります。
子育て支援については、昨年成立した、子ども・子育て支援法をはじめとする、関連3法案の施行に向けた準備を進めてまいります。具体的な事業として、子ども・子育て支援事業計画を策定するため、保育の需要等を把握する調査の実施や、地方版子ども・子育て会議を設置してまいります。25年度は子育て支援と幼保一元化を担当する理事職を配置し、健康福祉部と教育委員会の部局を横断して、本市に合った子育て支援政策の検討を進めます。
スポーツの振興については、健康の維持・増進効果に期待できることから健康福祉部門に移管しましたが、引き続き教育委員会との連携を密にしながら、多様化する市民のスポーツへのニーズに応えるため、幼児から高齢者まで誰もがいつでも心身ともに健康でスポーツを楽しむことができる環境の整備に努めてまいります。また、スポーツ振興に重要な役割を果たす市民体育団体の体制の強化や自立化、活動の活性化策等について、検討を進めるとともに、連携の強化を図ります。
(4)観光経済部門
次に、観光経済部門についてです。
利用者の減少とともに運営経費が増えている湯~遊~バスについては、市内交通の状況や変化にも留意しながら、来誘客の利便性を維持しつつ経費削減が可能かなどを検討し、今後のあり方を決定してまいります。
参加者や観客の誘客が期待されるスポーツ観光については、スポーツ団体と連携を図りながら、新たなコースでのマラソン大会の実施に向けた検証を行うとともに、ランニングに適したモデルコース作成等を行います。
広域的な観光振興については、東駿河湾環状道路や沼津市の東部コンベンションセンターの整備、日本ジオパークの認定などを踏まえて、関係市町との連携を図りながら誘客を推進してまいります。
産業振興については、熱海商工会議所などの関連団体と更なる連携強化を図りながら、2年目となる「熱海市チャレンジ応援センター(A-biz)」事業を中心に企業の新商品開発や販路拡大など、売上げ増加に挑戦する中小企業者を支援してまいります。また、熱海商工会議所が行っております熱海ブランド事業(A-PLUS)を支援してまいります。
(5)建設部門
次に、建設部門についてです。
都市基盤整備は、市民そして多くの観光交流客の皆様に対して、安全で快適な空間を提供する重要な施策です。
市民生活に密着した生活道路については、今後老朽化する都市基盤施設の点検を行い、埋設管対策に合わせて予算も若干増やす中で、整備を推進してまいります。また、広域交通網につきましては、伊豆縦貫自動車道や伊豆湘南道路など、交流促進に資する整備、検討を推進してまいります。
渚地区及び長浜地区のコースタルリゾート計画については、「魅力的なまちづくり」という観点から推進し、海岸部の積極的な利活用に取り組むことで、本市と富士箱根伊豆エリアの「海の玄関」としての新たな魅力の創出に努めてまいります。
「熱海まちづくりビジョン」に示された市役所・湯前神社・銀座周辺の「熱海のへそ」については、市民、NPO団体、観光産業等に携わる方々と学識経験者等のアドバイスも受けながら、その具現化に向けた取り組みを進めてまいります。
各地域の自発的なまちづくりへの取り組みに対しても支援を行い、また、安全・安心のまちづくり施策として、市民の皆様が行う地震対策を木造住宅耐震補強制度の活用により支援してまいります。
22年度から有料化を導入した梅園については、その収益を園内の維持管理や基金に充当し、さらに磨きをかけてまいります。また、通年有料化を視野に、もみじ祭りにおける入園者調査や、開花時期の平準化に取り組みます。
マリンスパあたみについては、設備が老朽化して修繕が必要であること、現在の管理者に年間約4,000万円の赤字が発生していることが課題ですが、24年度末で現在の管理者との契約期間が満了します。今後の運営については、まず25年度の上半期は市民利用や観光需要を考慮して市の直営での営業を行い、下半期は施設を休止して修繕や改修等を行います。この間に新たな指定管理者を公募して、26年度から新しい指定管理者による運営再開を目指します。
(6)公営企業部門
次に、公営企業部門についてです。
公営企業三会計の経営状況のうち水道及び温泉事業会計については、料金改定による収入の確保や費用・人員の削減による支出の圧縮により、一時借入金の返済が終了、経営は安定化へと向かっていますが、引き続き経営の改善に取り組んでまいります。下水道事業会計については、23年度決算における実質資金不足額は16億8,000万円と、未だに厳しい状況が続いています。この不足額を早期に解消するため、引き続き経営健全化の取り組みを進めてまいります。
水道事業については、安定した供給を継続させるため、老朽施設の改修・耐震化や老朽管の布設替えを進めてまいります。また、漏水等の不明水を解消し有収率の向上を図るため、流量計の設置に向けた調査を実施します。なお、県営駿豆水道については、長期にわたる水需要を調査・提示し、静岡県に対して理解を求めていくなど、契約水量の見直しをはじめとする費用軽減に向け、三島市、函南町とともに取り組んでまいります。
下水道事業については、長寿命化計画に基づき、老朽化した浄水管理センター設備や管路の更新を進め、適切な維持管理を実施し、普及率の向上、公衆衛生の向上、そして公共用水域の保全に努めてまいります。なお、下水道事業を取り巻く社会情勢が近年大きく変化していることから、25年度は「熱海市公共下水道基本計画」を見直す予定です。
温泉事業については、貯湯槽の改築や老朽管の布設替えを行い、施設の改修により、利用者の皆様への安定給湯に努めてまいります。
(7)消防部門
次に、消防部門についてです。
住宅火災の予防対策については、住宅用火災警報器の設置を推進するとともに維持管理の啓発に努め、高齢者の安全を確保するため、関係機関と協力し防火訪問を実施してまいります。
通信指令体制については、迅速で的確な出動体制を確立するため、新消防庁舎建設に伴う高機能消防指令システム及び消防救急デジタル無線システムの整備を推進してまいります。
人口10万人都市に匹敵する年間3,000件を超える救急需要に対し、本市の救急業務の高度化を推進するため、救急救命士の養成及び整備計画に基づき消防署に最新鋭の高規格救急自動車の更新配備を行い、救急体制の強化に努めてまいります。
警防活動については、火災等による被害を軽減するため、4階以上の特定防火対象物の警防計画を策定します。
消防水利の整備については、年度計画に基づき、老朽化した40箇所の消火栓改良工事等を行ってまいります。
人材の確保・定着・育成については、人材研修に基づき静岡県消防学校等の外部研修機関への職員派遣に加え、本市の「安全・安心」を担う優秀な人材をより多く確保するためのインターンシップ制度の充実・活用やリクルート活動を継続的に実施するとともに、地域防災の要である消防団との更なる連携強化を図ってまいります。
(8)教育・文化部門
次に教育・文化部門についてです。
未来をひらく人づくりを推進するために「熱海市教育振興基本計画」に基づく諸施策を展開し、次代を担う子どもたちが郷土を愛し誇りを持ち、たくましく心豊かに成長する教育を推進するとともに、市民の生涯学習機会の充実を図り、その結果を社会に還元できる「循環型生涯学習社会」の確立に努めてまいります。
学校教育については、21世紀を担う子どもたちの育成という観点から、25年度は幼保一元化を見据えた取り組みに着手するとともに、幼稚園をはじめ「ことばの教室」の支援員を増員し、特別支援教育のさらなる充実を図ってまいります。あわせて、中学校区における保育園・幼稚園・小学校・中学校の連携と連続性のある教育の強化、地域の教育力や文化を活かした多様な学習機会の充実、国際観光温泉文化都市である本市の特性を活かしたキャリア教育の推進、そして、グローバル社会を担う人材育成に力を入れてまいります。また、離島である初島の高校生の修学を支援してまいります。
社会教育については、誰もが生涯にわたって学び続けることができる環境の構築に努めます。あわせて、旧日向別邸や石丁場遺跡等の文化財の保護・保存をはじめ、文化施設の整備・活用、多文化共生や文化活動の促進、地域文化の継承と振興を図り、地域の活性化にも繋げてまいります。
図書館については、新図書館構想の目標を「歴史に学び 未来を築く 市民の図書館」と定め、多様化、高度化する市民の知的要求に的確に応える図書館サービスの実現に取り組んでまいります。また、「熱海の歴史を学べる図書館」として、貴重な郷土資料や情報の収集・保存、活用・提供に努め、市民に親しまれ役立つ図書館を目指します。
7.むすびに
以上ご説明した平成25年度の施策は、明治、昭和に続く「第三の成長期」の実現を目指し、「新生(リニューアル)熱海」をさらに前進させるためのものです。本市にとりましては新たな挑戦であり、大きな跳躍力が必要です。行政のみならず、市議会、産業界、そして市民が一体となって、全力で取り組んでいかなければなりません。
議員各位、並びに市民の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。
平成25年2月22日
熱海市長 齊藤 栄
予算の概要は下記よりご覧ください。
施策の概要は下記よりご覧ください。
広報あたみ2013年4月号別冊は下記をご覧ください。
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広報あたみ2013年4月号別冊 (PDF 1.8MB)
※3ページ年表中の昭和29年「東海道新幹線、新幹線熱海駅が開業」は正しくは昭和39年です。
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〒413-8550 熱海市中央町1-1
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