平成19年3月市議会定例会市長施政方針

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ページ番号1002238  更新日 平成29年6月21日

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写真:壇上の市長

平成19年3月市議会定例会が開催されるにあたり、私の市政運営についての所信と平成19年度の施策の大綱を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
私は昨年9月の熱海市長選挙におきまして、多くの市民の皆様から市政改革への多大なる期待をいただき、第21代熱海市長に就任いたしました。
熱海市政を取り巻く環境は、非常に厳しいものがありますが、全身全霊を方傾け、熱海の再生に取り組み、本市の発展と市民生活の向上を図ってまいる所存であります。
さて、時代は大きな転換期を迎えております。総務省の人口推計によれば、日本の総人口は、2004年12月の約1億2,783万人をピークに減少に転じております。我が国において総人口の長期的な減少は有史以来初めてのことであります。
私は市政を預かるものとして、市役所の役割もこの時代の転換期を踏まえて変わるべきであると考えております。
これまでの地方自治体は、人口や経済活動の全体量が増える中で、国や県の出す方針や指導によって運営されることが基本となっておりました。しかし、人口減少の時代を迎え、これからは自らの頭で市政の運営方針を考え、自らの手足で人口と税収を稼いでいくことが必須なこととなってまいります。
私は、このことを踏まえ、本年1月4日の仕事始め式の訓示で、「株式会社 熱海市役所」という言葉を使いました。これからは職員一人一人に人口減少社会という時代認識と、民間企業と同じ行動意識を持たせ、市政運営を行ってまいりたいと考えております。

次に、私が長期展望として持っている「熱海再生のビジョン」についてお話ししたいと思います。
本市は、大正14年の国鉄熱海駅の開業、そして昭和9年の丹那トンネルの開通を契機に、温泉地としてその大きな発展が始まりました。その後、日本の高度経済成長の波に乗り、昭和40年代の前半には我が国有数の観光地として繁栄を極めました。しかし、その後は現在まで、人口、宿泊客数ともに、大きな傾向として一貫して減少し続けております。
本市は今まさに、企業でいえば「第2の創業」を始めなければならない時期に来ているといえます。熱海市は今、市政の全てをゼロから見直すとともに、本市の持つ海・山・島の美しい自然環境、質量ともに全国屈指の温泉、さらに首都圏からのアクセスの良さといった財産を活かしながら、時代のニーズの変化に合わせ、「長期滞在型の保養地」としての要素を取り入れていく必要があると考えます。
そして、本市を温泉、食事、文化施設などを楽しむ観光地としての魅力に加え、健康になる、美しくなる、新しいことを学ぶ、研究するといった活動も、長期滞在しながら行っていける場にしてまいりたいと考えております。
また、国内で最多の芸妓衆を誇るなど、日本の伝統文化という資源も有する本市は、国際会議の誘致などを視野に入れ、世界の来遊客を迎え入れる「世界の保養地」を目指していきます。
本市が、今後、長期的に発展していくためには三つの柱が必要であると考えます。
第1の柱は「民の力の活用」であります。
私は、現在の本市の財政力で、新たな発展のための整備を全てまかなっていくことは難しいと思っております。今後は、誘致する産業の分野、地元企業との競合などについての基本的なルールを作成した上で、首都圏を中心に他の地域からの投資を積極的に推進していく必要があると考えております。
第2の柱は「新産業の創出」であります。
本市は現在、観光業が基幹産業であり、このことは今後とも変わることはありませんが、景気に左右されにくい産業を持つこと、若年層の雇用の場を確保することなどのためにも、観光業以外の新しい産業の創出が求められます。
私は、温泉という本市最大の資源を活かした、健康、医療、美容に関する研究施設を誘致したいと考えております。また、これらの研究施設を核に、関連産業の集積も進めていきたいと考えております。
第3の柱は「景観の整備」であります。
本市は、「都市景観条例」、「まちづくり条例」の制定など、景観については先駆的な自治体であります。今後とも、私は「世界の保養地」に値する景観の保全と創出に力を入れたいと考えております。
このため、平成19年度は「景観のグランドデザイン」を策定するための予算を計上しております。市民の参画をいただきながら、熱海の財産としての景観の整備を、長期的な課題として取り組んでまいります。
以上が、私が描く「熱海再生のビジョン」であります。
さて、平成19年度の予算編成に当たって、私が最も留意したことは財政の健全化であります。私は、昨年12月に財政についての宣言を出し、市民の皆様に対して本市の財政状況を明らかにしてまいりました。多くの市民の皆様に本市の財政状況を認識していただいたことは、財政再建に向けての大きな一歩でありました。
予算の編成に当たりましては、新たな財源の確保と事業の見直しに重点を置きました。
まず、歳入についてであります。市税収入につきましては、可能な限り税収を見込み、収納率の向上についても職員の努力により達成可能な昨年度より約3億円の増収を計上いたしました。さらに、休眠している市有財産の活用を図るため、土地の売却収入も見込みました。
次に、歳出についてであります。本市の基幹産業であります観光業や商店街の振興につきましては、新規予算を計上いたしましたが、現時点でできうる限りの歳出削減を行いました。
具体的には、道路建設や公園整備の抑制を行うとともに、市民サービスに係る経費の一部を削減いたしました。また、平成18年度に行いました「事業仕分け」の結果を尊重し、各種事業の縮減を行いました。さらに、私と副市長の給与引き下げ、補助金の削減などを行いましたが、それでも歳出に見合った歳入が確保できず、やむを得ず基金を取り崩しての予算編成となりました。
以上の結果、平成19年度一般会計の予算規模は、181億9千万円で対前年度比1.6%の減となりました。また、特別会計、公営企業会計を合計いたしますと、386億3千7百万円余となり、対前年度比2.2%の減となりました。
以下、主要な施策の概要について、各事業部門に分けてご説明申し上げます。

はじめに、総務・財政部門についてであります。
財政の再建につきましては、まず「財政再建スタート宣言」を受けての行財政改革会議において、財政再建計画を作成してまいります。この計画に基づき、定員適正化計画を超える職員数の削減、市役所が行っている全事務事業の見直し、各種施設の民営化などを図り、平成20年度以降は歳入規模に見合った歳出としてまいりたいと考えております。
市制施行70周年記念事業につきましては、財政の厳しい中ではありますが、市民参加を基本に展開し、郷土愛を培い、誇りの持てるまちづくりの原点となるよう努めてまいります。
職員数の減少による影響を防ぐため、職員の事務能力の向上や専門的知識を高めるための研修を充実してまいります。

次に、観光文化部門についてであります。
本市の基幹産業は観光業であります。かつての熱海の賑わいを創出していくには、官民が一丸となって観光振興に取り組む必要があります。また、これまでの観光施策を総括し、観光基本計画など新たな観光戦略をたてていく必要があります。この課題に対応するため、観光関係団体、学識経験者、そして市民などの幅広い参画をいただきながら、観光戦略会議を設置してまいります。
市内で年間を通じて開催されている観光イベントは約70回と、その数は他市町村の比較にならないほど多く行われています。しかしながら、これまでその効果分析は必ずしも十分には行われておりませんでした。このため、設置を予定している観光戦略室において、イベントの効果等を検証し、より集客力の高いイベントの開催を目指してまいります。
JR熱海駅のコンシェルジェ内で行っている熱海駅観光案内協議会の案内業務につきましては、熱海のみならず伊豆半島の玄関口としての重要な役割も持つため、旅行者ニーズの把握と観光情報の発信の拠点として充実に努めてまいります。
数、技量とも日本一を誇る熱海芸妓は、歴史ある芸妓文化の継承者であり、「観光熱海」の担い手であります。「熱海をどり」や「華の舞」の公演を引き続き支援するとともに、外国人観光客の誘客促進のため、来熱の際に「華の舞」を観覧いただく歓迎事業を展開してまいります。
東アジアからの誘客対策につきましては、中国及び韓国に対して誘客プロモーションを積極的に実施してまいります。
また、「歩いて楽しい観光地づくり」の一環として、サンビーチや親水公園と渚小公園、起雲閣、芸妓見番などをつなぎネットワーク化を図るまちづくり事業につきましては、引き続き実施してまいります。
観光拠点であります熱海梅園につきましては、来園者の回遊性の向上や澤田政廣記念美術館の入館者の増加、また近い将来想定している有料化も考慮し、澤田政廣記念美術館と韓国庭園とを結ぶ歩道橋の整備を進めます。
林ガ丘公園につきましては、「湯けむりの庭(仮称)」など、園内の広場整備に着手してまいります。
花を活かしたまちづくりにつきましては、公共花壇に特色のある花を植栽するとともに、観光施設及び文化施設に期間を定めて花の装飾を行い、癒しの演出を行ってまいります。
熱海の発展に大きな足跡を残して下さった坪内逍遙先生の「熱海ページェント」を市制施行70周年記念事業の一環として、6月に開催いたします。
国の重要文化財に指定された「旧日向別邸」につきましては、今後の保存修復及び活用のための計画を策定してまいります。
日本を代表する芸術家池田満寿夫先生の作品を展示した、「池田満寿夫記念館」を下多賀に開館し、既存の「池田満寿夫・佐藤陽子創作の家」、そのほかの文化施設との相乗効果を高めてまいります。

次に、商工農林水産部門についてであります。
商店街振興につきましては、空き店舗の活用を商店街組合や団体が行う場合に補助をしてまいります。また、特色ある商店街づくりのため、これに伴う調査やマップ作りなどをはじめ、新商品の開発などのソフト事業も支援してまいります。
農林水産業につきましては、基盤整備をはじめ鳥獣害対策を引き続き進めてまいります。また深刻となっている後継者問題を解消する手立てとして、関係団体とも協議しながら研究会や研修会などを開催してまいります。

次に、市民福祉部門についてであります。
急速に進む少子高齢化への対策、障害を持つ方々への支援、市民の皆様の健康保持、地球温暖化対策など、誰もが住み慣れた地域で、健康で生きがいを持ち、安心して暮らすことができるよう施策の推進に努めてまいります。
幼児期における疾病の早期発見・予防のため、4歳から就学前までの間に健康診査を受ける機会の無かった幼児につきましては、内科診察、歯科検診等の「すこやか健康診査」を実施してまいります。
子育て支援につきましては、次世代育成支援行動計画に基づき、未就学児童の医療費助成などの経済的な支援策や、中央保育園の整備などの、仕事と育児の両立を図るための支援策など、子育てしやすいまちづくりを進めてまいります。
高齢者への支援につきましては、社会的孤立感の解消を図るための「生きがい活動支援通所事業」など、高齢者が生きがいを持って、健康で安心して生活できる支援策を実施してまいります。
介護保険事業につきましては、在宅及び施設に関する介護サービス提供基盤の充実と質の向上に努めていくとともに、事業者情報の提供など利用しやすい仕組みづくりに努めてまいります。また、総合相談などの包括的支援業務と予防給付のケアマネジメントなどの介護予防支援業務を担う地域包括支援センターにつきましては、その充実を図ってまいります。
障害者支援につきましては、梅園荘跡地への障害者福祉施設の整備促進など障害福祉サービスの提供基盤の確保を図っていくとともに、障害者自立支援法に即して施策を推進してまいります。
国民健康保険事業につきましては、医療費の増加により依然として大変厳しい状況が続いており、今後も適正な運営に努めてまいります。
熱海サンビーチの禁煙化に続き、南熱海の各海水浴場の禁煙化につきましては、平成19年度の海開きに合わせ実施してまいります。
地球の温暖化、環境保全の観点から、太陽光発電システムにつきましては、設置の補助を引き続き行ってまいります。
熱海市全体の一般廃棄物につきましては、基本となる処理計画を本年度に策定するとともに、本計画を熱海市と湯河原町との共同し尿処理施設の建設に活用してまいります。
戸籍の電算処理につきましては、個人情報の保護と事務の簡素・効率化を図るため12月の稼動に向けて準備を進めてまいります。

次に、教育部門についてであります。
子どもは、熱海の未来を託す大切な財産であります。学校においては「確かな学力の育成」、家庭においては「しつけや欠食の改善」、地域においては「地域ぐるみの安全対策や声掛け」など、それぞれが役割を認識し、連携を図りながら子どもを育てて行かなければなりません。
「放課後子どもプラン」につきましては、放課後における安全安心な子どもの活動拠点と、学ぶ意欲のある子ども達に学習機会を提供する小学生対象の補助事業を、市単独事業で中学生まで拡大してまいります。
学校用務員につきましては、これまで学校に常駐していたものを教育委員会に配置し、新たに学校環境保全員を初島を除く全校に配置することにより、児童生徒の安全確保と校舎周辺の環境美化に努めてまいります。
多賀小学校の給食調理業務につきましては、安全性に配慮しながら市内5校目の民間委託を実施してまいります。
私立幼稚園の3歳児保育料につきましては、保護者の負担を軽減するため、補助金を増額してまいります。
家庭教育につきましては、子どもへのしつけや欠食児童生徒の解消、家庭学習の意識付けなど、その重要性について普及を図ってまいります。
スポーツ振興につきましては、静岡県市町村対抗駅伝競走大会や市民駅伝競走大会に、市民の関心が高まってきていることから、これを契機に、陸上競技をはじめとする各種競技の普及・促進に努め、生涯スポーツ社会の実現に向けて、「市民一人1スポーツ」を目標に取り組んでまいります。
16万部を所蔵する図書館につきましては、本年8月に移転し、地域や市民に役立つ図書館として、より一層市民の利便性の向上に努めてまいります。
江戸城築城のために切り出された刻印石は、伊豆東海岸の熱海、伊東、東伊豆に点在しており、市内ではこの刻印石を包蔵する下多賀の中張窪遺跡が顕著であります。今後2年をかけてこれらの遺跡の調査・発掘をしてまいります。

次に、建設部門についてであります。
まち全体を魅力あるものにしていくために、社会資本の整備充実は急がなければなりません。このため効果的な整備を効率的に進める必要があります。また、事業施工に当たっては建設コストの削減に努めてまいります。
美しい自然と調和のとれた都市景観を創出するため景観条例を制定し、熱海の魅力である景観美を大切にしてまいります。また、中心市街地のグランドデザインを策定するため、都市デザインの検討調査を行ってまいります。
市民の皆様から強い要望があります熱海駅前広場の整備につきましては、本年度は実施設計を行ってまいります。
広域道路であります伊豆湘南道路につきましては、熱函道路を延進するなど、現状の道路をつないで早期に実現するよう議論を重ねてまいります。
中部横断道路につきましては、南熱海第5工区の取り合い道路の整備を進めてまいります。また、都市計画路線につきましては、都松水口線の道路の修景に努めるとともに、戸又大渡所線、池田楠ヶ洞線、熱海駅伊豆山神社線につきましては、年次計画に基づき整備を進めてまいります。
コースタルリゾート計画につきましては、渚地区第3工区は修景施設の基盤整備を行い、長浜地区北工区は園路広場の整備を進めてまいります。
市営住宅につきましては、空き室修繕を進め入居の促進を図り、入居希望者の待機解消に努めてまいります。また、平成23年4月にスタートする地上デジタル放送の受信のため、市営住宅の内部配線の改修等を計画的に行ってまいります。
新庁舎の建設につきましては、着工を平成20年度に1年延期させていただきます。将来の職員数などを勘案し、議員並びに市民の皆様の意見を伺いながら本市にふさわしい庁舎にしてまいります。

次に、消防・防災部門についてであります。
昨年の火災状況は、発生件数及び損害額とも本市が統計を取りはじめてからの最小記録となりました。これも市民の皆様に予防消防が定着し、その成果の表れであると思われます。地域の「安全安心」の確保のため、引き続き関係機関との連携のもと消防防災活動に取り組んでまいります。
情報伝達に欠くことのできない同報無線につきましては、無線の聞こえにくい地域に子局の増設などを行い、消防・防災力の整備・充実を図ってまいります。
県下一の活動実績を誇る本市の消防団につきましては、処遇改善のため年額報酬及び出動手当の改定を行ってまいります。
自主防災活動は、昨年「山の手自主防災連絡会」が防災担当大臣表彰を受賞いたしましたように、県下一を誇る活動であります。より一層の地域防災力の強化を図り、災害時にその被害を最小に食い止めるため、木造住宅の耐震補強に対する補助の拡充や、家具転倒防止器具の購入をはじめとする防災資機材等の整備に対して支援をしてまいります。
さらに、「地域安全コミュニティ会議」をはじめとした関係機関・団体との連携を図りながら、防災・防犯・交通安全の確保のための実践活動の充実にも努めてまいります。

次に、公営企業部門についてであります。
公営企業3会計につきましては、人口減・節水型社会の到来から十分な料金収入が見込めず経営が厳しい状況にあります。このため財政計画に基づき料金収入の確保に努めるとともに、より一層事業の取捨選択及び民間委託の推進に重点を置き、経営の改善に取り組んでまいります。
また、多額の未収金につきましては、受益者負担の公平性を保つことからも、滞納者に対して停水・停湯時期を早めるなど厳しい態度で臨み、未収金の減少に努めてまいります。
水道事業につきましては、水道料金等徴収業務を民間に委託し、経費の節減に努めてまいりますが、経営改善に向けて市民の皆様のご理解のもと、6%の料金値上げを7月からお願いするものであります。
下水道事業につきましては、管渠布設及び浄水管理センターの既存設備の更新計画について、年次計画を見直すことで費用の削減を図ってまいります。
温泉事業につきましては、業務の全般的な見直しを行い、温泉の安定供給と新規加入者の加入促進を図ってまいります。

以上、平成19年度における市政運営についての基本的な考えと重要施策の概要について申し上げてまいりました。
平成19年は熱海市制施行70周年の節目の年にあたります。本市が80周年、90周年、100周年を迎えたときに、平成19年が熱海にとって「第2の創業」のスタートの年であった、「熱海再生の元年」であったといわれるよう、私の持てる全ての力を傾注してまいる所存であります。
議員各位並びに市民の皆様におかれましては、特段のご理解とご協力、そしてご支援を賜りますよう、心からお願い申し上げまして、私の施政方針といたします。

平成19年3月1日

熱海市長 齊藤 栄

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