平成22年9月市議会定例会齊藤市長所信表明演説

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ページ番号1002225  更新日 平成29年6月21日

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写真:平成22年9月市議会定例会齊藤市長所信表明演説

1、はじめに

今回の熱海市長選挙は戦後最も暑い夏の中で行われました。この間、私は何千という市民の皆様と直接向き合いました。「熱海が少しずつ変わってきた」という声がある一方で、経済の厳しさに対する悲鳴、子育てに対する不安など様々な声をお聞きしました。中には握手をしながら私の目を見詰め、ポロポロと涙を流された女性もいました。そこにあったのは、私に対する「熱海を良くして欲しい」という共通の切実な願いでした。私は市長に就任してからこの4年間、これほど強く市民の期待を感じたことはありません。

私は今回の選挙結果を「民意」の表れとして、大変重く受け止めています。これからの4年間、市民の皆様の期待に応えるべく、民意を反映した市政を誠実にそして着実に実行してまいります。

2、財政再建の4年間

私が市長に就任した平成18年9月当時、熱海市は財政破綻の危機にまさに直面していました。市の貯金である基金は底をつき、それまでの財政運営を続ければ、財政再生団体として国の管理下に置かれる危険性がありました。このため、私は本市における最優先課題は「財政再建」であるとし、平成18年12月に「財政危機宣言」を発し、その後「行財政改革プラン」を策定して、この課題の解決に全力で取り組んでまいりました。

この取り組みは大変な「茨の道」でありました。なぜなら、行政サービスの見直しや公共料金の値上げなどで市民の皆様に大きな負担をお願いするとともに、大型公共事業の凍結、産業界への支援の見直し、市職員の大幅な賃金カットや職員数削減も進めざるを得なかったからです。特に、敬老大会の廃止などの福祉サービスの見直しは辛い決断であり、私にとってこの4年間は苦渋の選択の連続でした。

市民の皆様を始め、産業界、市議会及び市職員のご理解とご協力により、当面の財政危機は脱することができました。財政再建はまだ道半ばではありますが、上下水道温泉事業の不良債務を平成18年度の41億円から平成21年度には20億円へと半減させ、職員数や職員人件費も大幅に削減できました。市の財政再建にご協力頂いた全ての市民の皆様に改めて感謝を申し上げたいと思います。

3、新政策ビジョン

熱海市は新たなステージに立っています。これまでの財政再建の取り組みが一定の成果を上げた中、「新しい熱海の創造」に取り組んでいく所存です。齊藤市政は今、本格的なスタートを切ったのです。今後4年間で、私が取り組む基本的な政策を「新政策ビジョン」として掲げます。

第1の柱は「元気な経済」の実現です。

観光を基幹産業とする本市にとって、宿泊客の減少は深刻な問題であり、地域経済の冷え込みはまち全体の停滞に拍車をかけています。現在、世界中の観光地が熱海の競争相手として立ちはだかっており、今後、熱海が観光地として生き残るためには、「熱海ならではのオリジナリティある魅力」、「No.1の魅力」を持つことが必須です。

幸いなことに、熱海にはこの状況を打破するための基本的な条件が備わっています。東京から新幹線で僅か50分の立地に、豊かな自然と豊富な温泉、目の前の海で獲れた新鮮な魚介類や温暖な気候のもとで育った柑橘類があります。湯治場として栄えた歴史や文化もあり、これらの資源を総動員することで、魅力ある観光都市熱海を、そして将来的に私が目指している「長期滞在型の世界の保養地・熱海」を必ず実現できると考えております。

まず、熱海の「シティプロモーション」に市が先頭に立って取り組んでいきます。「熱海」の知名度に頼る「待ち」の姿勢ではなく、首都圏アンテナショップの検討などにより、これまで磨いてきた熱海の魅力や宝を国の内外に積極的に売り出していく「攻め」の取り組みを進めます。直近では、梅園の梅、糸川のあたみ桜の整備を活かし、全国に「日本一早咲きの梅と桜が同時に楽しめる熱海」を発信します。

次に、「熱海ブランド」の再構築のため、流通市場の再生、新商品の開発などを支援し、地産地消の取り組みを強化します。また、農漁業者や商業者などの経営改善を図るための支援施策や商店街空き店舗対策を重視して取り組みます。観光まち歩きなどの市民活動を引き続き支援し、地域の宝を再発掘します。

そして、「広域観光圏」を最大限に活用します。熱海、箱根、湯河原という全国でもトップクラスの観光地が連携して、新たな観光誘客を行います。外国語による表示や通訳サービスといった、外国人誘客の環境づくりもしっかり支援していきます。

今後、中長期的な視点で力を入れていきたい分野に「環境・新エネルギー」があります。温泉熱を活用した温度差発電は、まだ実験段階ですが、実用化されれば、市民生活や地域経済の活性化に大きく貢献するものです。また、大量の食品残渣が出る観光地の特徴を活かし、この資源を利用したバイオリサイクルシステムを検討し、その実用化を目指します。

以上、基幹産業である観光業の活性化などにより、「元気な経済」の実現を図ってまいります。

第2の柱は、「豊かな暮らし」の実感です。

残念ながら、市の人口減少に歯止めがかかりません。低い出生率と高い高齢化率で、熱海市は県内でも有数の少子高齢化都市です。子育て支援策を強化するとともに、子育て世代を熱海市に呼び込み、人口増を図ります。高齢化施策にも注力しながら、本市に暮らす魅力を市民が実感できるように取り組んでまいります。

「子育て」については、現在小学2年生までの子ども医療費の無料化を中学3年生まで拡大します。放課後児童クラブいわゆる学童保育を充実・拡大して、共働き家庭を支援します。公立保育園の年末保育を本格実施するとともに、休日保育の実施も検討します。

「教育」については国際観光都市熱海の人材育成の基礎をつくる教育環境を整備します。また、市内唯一の熱海高校の通学路となる「さくらの名所散策路」の早期完成を目指します。

「長寿社会」への対応については、高齢者の皆様が健やかに長生きできるように、湯楽YOU楽体操も活用し、温泉地熱海ならではの熱海式介護予防を確立してまいります。地域や商店街などと連携して、高齢者サロンを整備するとともに、高齢者の貴重な経験や技能を活かした「生きがい事業」を充実・拡大していきます。
「都市整備」については、熱海駅前広場、いわゆる熱海のへそ(湯前神社、銀座通り、市役所周辺)、観光港施設用地の整備・活用について、市民とともに検討し、熱海らしいまちづくりを進めてまいります。
市内の公共施設の「耐震化」については、市民、職員の安全という観点から重要な課題です。子ども達を守るための学校施設などの耐震化と、防災の拠点となる消防庁舎の耐震化を優先的に進めます。市庁舎の建て替えにつきましては、基礎となる財源確保を優先し、それまでの間、分庁化を基本に対応してまいります。

熱海の貴重な資源である「温泉」については、温泉の利用最適化の研究を進め、全ての市民が温泉の恩恵を享受できる環境を目指します。

このほか福祉、教育、医療、健康、安心・安全などの分野において、施策を積極的に展開し、「豊かな暮らし」が実感できる熱海市を創出してまいります。

第3の柱は、「行財政改革」の推進です。

財政再建の取り組みは、これまで一定の成果を上げていますが、油断すると再び厳しい事態となります。行財政改革に引き続き取り組み、ムダの無い行政運営と財政健全化で、市民サービスの充実を図っていきます。

「財政健全化」については、熱海方式の事業仕分けの実施などにより、引き続き歳出削減に取り組むとともに、産業の活性化や収益事業による歳入増加を図ります。また、市長の退職金は引き続き受け取りません。

次に、「スリムで効率的な組織」と「職員の意識改革」についてです。事業の効率化とアウトソーシングの推進などで、市役所をスリムで効率的な組織とします。さらに、職員の教育を充実して、前例主義にとらわれない、市民目線で考え行動できる職員を育てます。

以上、新政策ビジョンの3つの柱について述べました。熱海再生の第二期にあたり、これまでの「財政再建」から、「元気な経済」と「豊かな暮らし」へ施策の重点を徐々に移してまいります。

4、おわりに

約20年前、私は国土庁で働いていた時に「中央で官僚が全てを決める仕組みはいずれ破綻する。中央集権の日本を変えていくのは首長しかない」と考え、市長になりたいと思い定めました。私が政治を志した原点は「地方自治」と「市民」にあります。私は、市政は市長や議員、市職員だけのものではなく、市民一人ひとりが市政に参画し、共に築いていくものと考えています。市民の皆様には、市政を動かすのは自分達だということ、また、市政は自分から遠い話なのではなく、自分自身の日常生活に直結するということを認識し、市政への関心を是非とも持ち続けていただきたいと思います。

私は常々感じることがあります。それは熱海が繁栄しないわけがないということです。海、山、温泉、そして島があり、しかも新幹線が停まる温泉地は日本に熱海しかありません。これだけの条件が揃っている恵まれた熱海市は、政治と行政が本来あるべき力を発揮すれば必ず再生できる。私はそう確信しています。

市民の付託を受けた今、選挙戦で市民の皆様に提示した「新政策ビジョン」を速やかに実行に移すことが私に課された使命です。これからの4年間、市民の皆様とともに「新しい熱海」そして「新しい熱海の政治」を創っていくことに全力を挙げてまいります。

私が言及するまでもなく、行政と議会は車の両輪です。両者が噛み合って初めて車は前に進みます。各々の主義主張に関らず、「熱海を良くしたい」という気持ちは必ず共有できると信じています。議員各位におかれましては、市民のため、そして新しい熱海の創造のため、市政運営に対し、会派を超えたご理解とご協力を頂けることを強くお願い申し上げます。

熱海再生への道は決して平坦ではなく、再生のための苦しみが多々あるでしょう。臆することなく、共に力を合わせて、前進していきましょう。私は市長として、自分の持てる全ての力を使って、市政に取り組んでまいります。

市民の皆様、そして議員各位に、ご理解とご支援をよろしくお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

平成22年9月30日
熱海市長 齊藤 栄

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